歯周病と肝臓病


歯周病は、歯周病菌が歯茎に入り込んで炎症を引き起こし、歯の周囲の組織を破壊する生活習慣病です。

進行すると、歯茎が下がり歯を支える骨や靭帯を破壊して歯が動揺していきます。
日本人の約8割が歯周病にかかっているともいわれているのです。

歯周病は歯を失う最大の原因となるだけでなく、全身の病気にも関わることがわかっています。
たとえば、心臓病・心筋梗塞・動脈硬化・糖尿病・腎臓病などに様々な病気に歯周病は関係しているのです。

また、近年は新たに「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の発症にも歯周病が関与することが指摘されています。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とは

NASHとは、日常的にアルコールを飲まない人の肝臓に脂肪が蓄積して肝臓に炎症を起こしている状態を指します。

アルコールの過剰摂取が脂肪肝になることはよく知られていますが、飲酒歴がない人にも脂肪肝になるのです。
治療をせずに放置していると、脂肪肝から慢性肝炎・肝硬変・肝がんへと進行する可能性があります。

NASHと歯周病がどう関係しているかというと、まず歯周病になると歯の周囲の組織が壊されて、歯周ポケットと呼ばれる深い溝が形成されます。

歯周ポケットに存在する歯垢の中の細菌が血流を介して肝臓へと到達し、病気を進行させると考えられているのです。

NASHは、20年ほど前までは治療対象とされていませんでしたが、肝がんへと進行した事例が報告されたことで、適切な予防や早期治療が必要な病気として注目されるようになりました。

NASHを防ぐ方法


歯周病の治療・予防が、NASHの予防につながる可能性があります
NASHの患者さんに対して歯周病の治療をしたところ、肝臓の数値が改善したという研究報告もあるのです。

歯科医院にて自費診療の歯周病菌検査(PCR法)を受ければ、悪玉菌の有無や数を調べることが可能で、より良い歯周病治療を受けることが可能です。
結果に応じて、歯科医師や歯科衛生士から歯周病予防のアドバイスも受けられます!

また、食べ過ぎや運動不足もNASHとなる大きな原因です。

歯磨きの工夫

歯周病の治療・予防と聞いて、まず思い浮かぶのが日々の歯磨きではないでしょうか。

しかしながらすでに歯周病にかかっている場合、歯磨きの仕方によっては弱った歯茎をさらに傷つけ、血液中に歯周病菌を運んでしまう可能性があります。

また、毎日歯を磨いているから大丈夫、と思った方!
その歯磨き、本当にきちんと磨けていますか?

歯磨きでお口の中のすべての汚れを全部取り切るのはとても難しいんです。
毎日磨いてきれいにしている、と思っていても実は磨き残しがたくさんあって歯磨きの効果が得られいない人は多いんですよ。

1日3回の歯磨きをすればいいんでしょ、と思わず、歯磨きがどのくらい上手くできているのか、どこがうまく磨けていないのか、次からどう磨くべきなのか、などを歯科医院でアドバイスをもらいましょう!

食べ過ぎ、太り過ぎに注意

歯周病以外に、食べ過ぎや肥満もNASHの発症や進行に大きく関係しています。

というのも、食事で摂取したカロリーが体内で消費しきれない場合、中性脂肪が肝臓で作られ、脂肪肝を引き起こすのです。

そのため、食べ過ぎや運動不足には十分に注意しなければなりません。
また、肥満は腸内細菌のバランスを崩し、NASHを悪化させていく恐れがあります。

アルコールを摂取していなくても、肝臓にはさまざまな悪影響がもたらさせるのです。

医師によるNASHの治療とは

NASHになっている場合には、早期治療が必要となります。
肝臓への脂肪のたまりやすさは体質によって異なるため、医師による治療は、患者さんそれぞれの体質を理解したうえで行われることが一般的です。

また、最近の研究では、脂肪肝になりやすい遺伝子があることもわかってきました。
そこで、遺伝子検査(自由診療)を行い、遺伝子の型を把握することもより効果的な治療につながります。

そのほか、脂肪肝の患者さんは、摂取した栄養素をエネルギーに変換するときに、活性酸素などの有害な物質を放出しやすく、それが肝細胞を傷つけてしまっています。
そのため、活性酸素を抑制する抗酸化剤を用いた治療も有効だと考えられているのです。

まとめ

NASHのようにアルコール以外の原因によって肝臓に異常をきたすことがあります。
食べ過ぎや運動不足による肥満のほかにも、歯周病が肝臓病の原因の一つであることが近年の研究でわかってきました。

そのため、肝臓の数値が悪い、すでに脂肪肝になっているといった場合には、歯周病の治療も視野に入れてみてくださいね。