歯槽膿漏のリスクは加齢とともに上がる


歯槽膿漏はいわゆる歯周病のこと。

以前は歯茎から膿が出ることから歯周病(歯肉炎と歯周炎の総称)を歯槽膿漏と呼ぶこともありましたが、膿が出る以外に様々な症状があるため、歯周病と呼ぶのも一般的です。

歯槽膿漏は、お口の中に歯周病原菌がたくさんいる状態を放置してしまい、歯茎や歯を支える骨に炎症が起きて、徐々に歯周組織が破壊されていきます。

歯槽膿漏の症状

歯槽膿漏(歯周病)は痛みや違和感がほとんど出ないこともあり、進行してから気づくことも多いです。

歯周病になっても症状がない場合が多いですが、歯周病の初期段階である歯肉炎(炎症が歯茎だけに起きている状態)では症状が目で分かることもあります。

例えば、歯肉炎の段階では、歯茎が赤くなる、腫れる、歯磨きをすると出血するなどです。

歯肉炎の時点で治療を始めることで、歯周病を予防することにもなるんです。
歯肉炎を放っておくと、歯周炎へと進行していきます。炎症が歯茎だけにとどまっていた歯肉炎とは異なり、歯を支える骨にも炎症が起こります。

歯茎は腫れ、骨や骨と歯をつなぐ靭帯(歯根膜)が減るために歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が4mm以上へと深くなっていくのです。
歯を支える骨が減り続けると、歯を支えることができなくなってしまい、動揺して最後は歯が抜けてしまうこともあるのです。

歯周病で歯が1本抜けると、ほかの歯も歯周病がかなり進行しておりどんどんダメになるといわれることがあります。
1部分だけ歯周病になるのではなく、お口の中全体で歯槽膿漏が進んでいると考えたほうがよいでしょう。

歯槽膿漏になる主な原因


細菌性プラーク

歯槽膿漏の主な原因はお口の中の汚れと歯周病菌です。

歯に付着しているプラーク(歯垢)は細菌の塊で、お口の中に残っている時間が長ければ長いほど歯周病菌は繁殖し、お口の中に炎症を引き起こしていきます。

食後の歯磨きでお口の中のプラークを除去することで予防ができますが、すべてのプラークを取り除くことは難しく、磨き残してしまった部位から歯槽膿漏は進行していきます。

糖尿病

糖尿病になると高血糖状態が続きますが、免疫力の低下により歯槽膿漏が進行しやすくなります。
歯周病になると血糖値のコントロールが悪くなることから、糖尿病と歯周病は密接にかかわっています。

生活習慣

喫煙や偏った食生活、睡眠不足も歯槽膿漏の原因になり得ます。

例えば、たばこに含まれる有害物質は血管を収縮し、歯茎の血流量を減少させます。
実は、歯槽膿漏の原因である歯周病菌は酸素を嫌う性質。

血液の循環が悪化して歯茎に行き渡る酸素の量が減ると、歯周病菌にとっては好ましい環境になってしまうんです。
免疫細胞も血流が減ると到達しにくくなり免疫機能が働きにくくなります。

また、歯周病菌は虫歯菌が作り出すプラークに集まっていきます。
虫歯菌が糖をエサとしてプラークを作り出しているんです。

甘いもの中心の食事を続けていたり、間食がもともと多く糖を摂取する機会が多かったりすると、虫歯菌がプラークを作り出しやすくなり、できたプラークに歯周病菌が集まっていく悪循環が生まれます。

甘いものの我慢は虫歯の予防として重要視されていますが、歯槽膿漏の予防にも効果的ともいえます。

歯槽膿漏は自分で治せる?


歯槽膿漏は基本的には自分では治せないと思っておきましょう。

歯槽膿漏には歯周病(歯肉炎と歯周炎の両方の)意味で使われることがあり、歯肉炎の段階であれば自分自身で治すことも可能でしょう。

歯肉炎の原因となるプラークを取り除き、お口の中を清潔にしておくことで歯肉炎の改善が見込めるためです。
しかし、歯肉炎にしろ、お口の中に汚れがたまっていることは同じです。

また、プラークは歯磨きで取り除くことができますが、プラークが固まってできた歯石は歯磨きでは取り除けません。
歯肉炎の場合も、すでにプラークは歯石になっていることが多く、いくら歯磨きをしても除去できず、放置すれば改善せず、歯周炎進行します。

歯茎のみに炎症が起きている歯肉炎の段階でも、歯科医院へ通院することをおすすめします。プラークの付着をチェックし、お掃除してもらいましょう。

また、歯石は歯科医院で専用の機械で落とすしか方法がありませんので、歯科医院で歯石の有無の確認や除去をしてもらうことが効率的です。

すでに歯周病になっている場合は、定期的に歯科医院へ通院し、少しずつお口の中を改善していきましょう。
歯周病が軽度であればあるほど、歯科医院への通院回数は少なくて済みますよ。

また、定期的に歯科医院へ通院していても、自分自身で歯磨きやケアをしなければ全く改善することはありません。
自分自身の日々の歯磨きと歯科医院での定期的な治療をしっかり行ってくださいね!

治療費の目安

歯槽膿漏の治療費は、1回の診察につき2000円~4000円前後(3割負担、検査や処置内容に前後)が目安です。

歯石取りや歯磨きの方法の指導、歯槽膿漏改善のための投薬など治療内容により治療費は変化しますので、費用が気になるなら都度歯科医師に聞きましょう。

歯槽膿漏(歯周病)であると診断された場合、基本的には歯槽膿漏の治療は公的医療保険が適用されます。
歯槽膿漏の治療は程度にもよりますが週1回、月1回、数ヶ月に1回など、歯茎の状態により通院頻度が変わり、継続的に通院することが一般的です。

医療保険が適用されても数千円の出費が継続的にかかるのはお財布への負担が大きいと感じるかもしれませんが、歯槽膿漏の治療をせずに歯を失うことになると入れ歯やブリッジ、インプラント…ともっとお金がかかります。

さらに、歯を失って食べられるものが減ったりお口の中の違和感を感じますし、誤嚥性肺炎や心筋梗塞などの治療費がのしかかるなどして経済的な負担だけでなく精神的な負担もかかってしまいます。
お口の健康、そして全身の健康を守るためにも、頑張って歯槽膿漏の治療を受けてほしいと思います。

歯槽膿漏の予防方法とは?


丁寧に歯を磨く

歯槽膿漏はお口の中の歯周病、そして間接的に虫歯菌が原因。
毎日のしっかりした歯磨きで、お口の中の汚れや菌を取り除くことが第一の予防方法です。

歯の表面だけでなく、歯と歯の隙間にたまった汚れも丁寧に取り除きましょう。
歯と歯の間は歯ブラシだけでは取り除けないため、デンタルフロスや歯間ブラシも併用してくださいね。

それに加えて、殺菌成分を配合した歯磨き剤やデンタルリンスを使用して、口の中の細菌を極力増やさないようにすることも効果的ですよ。

食生活を見直す

プラークは虫歯菌が糖を栄養として作り出されるため、甘い食べ物や飲み物を少し控えたり、だらだらと食べ続けず、食べたらすぐに歯を磨くようにしましょう。


たばこを吸わない

たばこにより歯茎の毛細血管を収縮させて酸素供給量を減らしてしまい免疫機能が働きにくくなります。
加えて、たばこに含まれるタールはべたべたした物質であり、菌やプラークがつきやすくなってしまいます。

たばこを吸うことは酸素を嫌う歯周病菌が住みやすいお口の環境を作ってしまうことになるため、たばこを吸わないことが歯槽膿漏になりにくいお口の中を作ることにもつながりますよ。

また、ニコチンは歯茎を収縮させる作用があり、歯肉炎になった時に歯茎の腫れや出血が抑えられてしまいます。
ニコチンの作用によって一見問題のない歯茎に見えるかもしれませんが、実は歯槽膿漏が進行して歯を支える骨が気づかない間に溶けている、なんてことになりかねません。

歯槽膿漏の予防のためには、禁煙をおすすめします。

まとめ

歯槽膿漏は、歯周病と同じ意味で使われています。歯を失う原因1位である怖い疾患です。

歯茎が赤くなっている、腫れている、歯を磨くと歯茎から出血するならば歯槽膿漏を疑って、歯科医院で検査を受けてみましょう。