ステロイドは免疫低下・炎症抑制効果がある


ステロイドとは、腎臓の上部にある副腎という臓器から作られるホルモンのことです。
体内でつくられるホルモンを薬として応用したものがステロイド薬で、免疫力を低下させたり炎症を抑制したりする作用があります。

ステロイドは塗り薬・内服薬・注射薬などの種類があり、様々な病気の治療に用いられています。
湿疹・皮膚炎の治療における塗り薬としてよく用いられているほか、喘息・関節リウマチ・シェーグレン症候群・がんなどの治療では、内服薬・注射薬・吸入薬として長期間使用することがあります。

使い勝手が良いようにも感じるステロイドですが副作用も多いです。
短期間の使用であれば問題が起こらない場合がほとんどですが、長期間の服用には注意が必要となります。

歯科では…

ステロイドは免疫力を低下させる作用があるため、長期間の使用によって虫歯や歯周病が引き起こされる可能性があります。

さらに、ステロイドには炎症抑制の作用もあることで、痛みや腫れ、出血を抑えるため、虫歯や歯周病が進行していても気付きにくくなる可能性があります。

ステロイドがお口の中に与える影響


喘息治療におけるステロイド吸入器などの使用により、お口の中に直接ステロイドが作用するとどのような悪影響があるのかを解説します。

口腔カンジダ症

ステロイド吸入によってお口の中の免疫力が低下すると、お口の中にカンジダ菌というカビが繁殖する「口腔カンジダ症」を発症することも。

普段は一定に保たれているお口の中の菌のバランスが崩れてカンジダ菌が繁殖し、お口の中の痛み、顕著に認められる舌苔(舌の上の白い付着物)、舌のザラザラ感などの違和感といった症状が現れます。

喉の違和感

ステロイドがお口の中に残っていることで、喉がイガイガするなどの違和感を覚えることがあります。

声枯れ

同様に、お口の中にステロイドが残っていると声枯れにもつながるのです。

カンジダや喉の違和感、声枯れといった副作用を防ぐためには、ステロイド吸入後にうがいを行います。ぶくぶくうがいとがらがらうがいでお口の中に残っているステロイドを洗い流しましょう。

このとき、「ステロイドを洗い流さないほうが、喘息などに効果があるのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。
ただ、吸入ステロイドは気管支に直接届くため、お口や喉の部分にステロイドを残しておく必要性はありません。

ステロイドが歯に与える悪影響

ステロイドが虫歯や歯周病以外に歯に直接与える悪影響についてご紹介します。

知覚過敏・歯痛

ステロイドを服用している患者さんの中には、食べ物を噛んだりする刺激などで歯がしみる知覚過敏や、歯痛を訴える方も少なくありません。
ただ、知覚過敏や歯痛は一部研究論文で触れられてはいるものの、ステロイドの副作用なのかは不明瞭です。

とはいえ、知覚過敏や歯痛を訴える患者さんは多く、ステロイドが影響しているのかもしれません。

ステロイドは長期間使ってはいけないの?


ステロイドは長期使用によって、副作用が出る可能性が高まる傾向にあります。
特に全身投与の際には、免疫力低下による重篤な感染症発症などの副作用が出る可能性があるため、少量であってもむやみに長期使用することは推奨されていません。

ただし、長期使用が必要な疾患もあるため、その場合は医師の指示に従って適正量を使用していくことが大切です。

また、ステロイドを長期使用していると、自身の体内でステロイドをつくる力が弱まっていきます。
この状態でステロイドの服用を急にやめると、体内のステロイドホルモンが不足して、倦怠感・吐き気・頭痛・関節痛・下痢・発熱・血圧低下などを発症し、命の危険に関わることもあるのです。

ステロイドは独断で使用したり中断したりせずに、医師の診断・指示を守ってください。

まとめ

様々な副作用があるステロイドについて、今回は特に歯を始めとしてお口の中にどのような影響を与えるのかを解説しました。

お子さんの喘息治療などでステロイド吸入をした後は、うがいを行ってお口の中に残ったステロイドを洗い流しましょう。治療によってはステロイドの長期使用が必要な場合もありますので、医師の診断に従って正しくステロイドを使用することが大切です。