サイナストラクトとは


サイナストラクトとは、歯茎にできる白いニキビのようなもののこと。
瘻孔(ろうこう)、フィステル、アブセス、内歯瘻(ないしろう)などとも呼ばれます。

子供から大人まで誰にでもできる可能性があり、特別珍しいものではありません。
ただし、放っておくと思わぬ危険があるのです。

サイナストラクトがあるかたはぜひ最後まで目を通してくださいね。

主な原因は進行した虫歯ですが、虫歯が歯冠から歯根まで侵入し、膿が溜まります。
膿は徐々に増え、歯根や歯を支える骨を圧迫・吸収してしまいます。

そこで、身体が膿を体外に排出しようとするために歯茎にできるのがサイナストラクトなのです。

サイナストラクトはニキビのような見た目で、表面には小さな穴が開き膿が出ることがあります。

痛みやしみるなどの症状はほとんど出ることがなく、噛んだ時に少しの違和感や痛みを感じる程度です。
また、指で触ると膿が出てくる、小さくなったり大きくなったりするなどの特徴がみられます。

触ると膿を出すことができますが、自分で出せる膿はほんの一部のみ。
また、指の雑菌が入り込んで悪化したり、痛みを伴うことがあるので触らないようにしましょう。

サイナストラクトの原因

では、サイナストラクトができる原因は何なのでしょうか。

歯の神経が壊死している


前述した通り、歯の表面にできた虫歯が歯の根っこまで進行すると、歯の神経が細菌によって壊疽してしまいます。
神経が死ぬと細菌が繁殖して歯根の先にやがて膿が溜まり、歯茎の表面まで膿が拡大し、最終的に歯茎の表面にサイナストラクトをつくって膿が排出されるのです。

また、顔を強くぶつけるなどの歯に強い衝撃が加わると歯の神経は壊死することがあり、虫歯のケースと同様にサイナストラクトの原因となることもあります。

虫歯や歯周病の放置が原因でできることが多いと考えられています。

歯根が折れている


歯根は恒常的な強い歯ぎしりや食いしばりが原因で折れてしまうことも多く、気が付かないうちに折れてしまっていることもあります。

なんとなく痛みがあるけど見た目に変化はない、と思っていたら歯の根が小さく折れていることも(顕微鏡で見たら割れているなんてことがあります)。
折れた歯根の隙間から細菌が侵入するとサイナストラクトの原因となります。

根管治療済みの歯から再感染している


虫歯が進み歯の神経まで到達した場合、虫歯菌に感染した歯の神経を取り除く「根管治療(感染根管治療)」というものが行われます。

過去に受けた根管治療の精度が低く根っこの中の細菌が十分に取り切れていない場合、もしくは根管治療がきちんとなされていても被せ物などの隙間から細菌が感染してしまう場合があります。

サイナストラクトは歯科医院に行く必要がある?

サイナストラクトは、多くの場合痛みを伴わず、見た目も口内炎のようなできもののため、「そのうち治るだろう」と放置する方も少なくありません。

実際のところ、歯科医院を受診する必要はあるのでしょうか。

サイナストラクトは市販薬でも治せる?


基本的にサイナストラクトは市販薬では治すことはできません。

膿が溜まっている歯根の先の膿がたまった袋、「嚢胞(のうほう)」には抗生物質などの薬の成分は届きにいくいです。

痛みがひどい場合には市販の痛み止めを服用して様子を見る方法もありますが、根本的な原因の解決にはなりません。

サイナストラクトは歯科医院での治療が必須


サイナストラクトは、市販薬での治療も自然治癒も見込めません。
治すには歯科医院での虫歯治療が必須です。

「放っておいたらサイナストラクトがなくなった」という場合も、一時的に歯茎の表面の膿が排出されただけであり、歯茎の中には膿の原因となる菌が残っています。また、指で押して表面の膿の排出を続けていても、サイナストラクトは治りません。
時間がたつにつれて再び菌が増えて歯茎の中の膿が増加し、サイナストラクトができるでしょう。

サイナストラクトがある、見つかった場合は早めに歯科医院で治療を受けましょう。

サイナストラクトの治療方法

では、歯科医院ではどのような治療をしてサイナストラクトを治していくのかを紹介します。

根管治療(感染根管治療)


根管とは、歯の神経が通っている歯の根っこの中の空洞のことです。
サイナストラクトは虫歯や歯周病の原因となる菌が歯の神経まで到達して炎症を起こしているため、根管の中もきれいにする必要があります。

根管は0.1㎜以下の細い空洞です。
そこに、ファイルやリーマーと呼ばれる針のように細い器具を差し込み、少しずつ根管の細菌や感染・腐食した根管の壁、神経を取り除いていきます。

ファイルには複数のサイズがあり、徐々にサイズを大きくして根管内の清掃をしていきます。

根管治療は週に1度通院し、歯の状況によって当日や数週間で終わることもあれば、数か月にわたって治療をすることもあります。
根管の中の清掃が終わったら神経が通っていた空洞をガッタパーチャと呼ばれる根管充填剤を用いて封鎖し、土台を立てて被せ物をして終了です。

歯の根っこに嚢胞ができている場合、歯茎を切り開く外科手術が必要です。

根管治療に関する論文は多くあり、治療の成功率や失敗率については論文によって異なりますが、根管治療は繰り返し行うと治療の成功率が90%から70%へと下がると報告している論文もあります。

歯根端切除術


歯根の先端付近の歯茎を切り開き、歯の根っこの先の嚢胞を切り出す方法です。
前歯や小臼歯(前から4番目5番目の歯)では可能な治療ですが、奥歯(大臼歯)では治療部位を目で見ることが難しいため、あまり適用されません。

根管治療単独でサイナストラクトがなくならなかった場合、症状改善が認められない場合などに行われます。

歯根端切除術は、まず嚢胞のある付近の歯茎を切り開きます。
切り開いた歯茎から嚢胞取り出し歯根の一部(2−3mm)も同時に切除します。

切除をした歯根は細菌が再度繁殖しないよう、断面に歯科材料で切断面を覆います。

外科手術は身体の負担も大きいため、根管治療で改善が見込めない場合に治療法のひとつとして検討されることが多いです。歯根端切除術で改善しない場合や適応できない場合は抜歯となります。

精密治療なため、一般の歯科医院では歯根端切除術ができないことも。
その場合は、サイナストラクトの治療に特化している歯科医院や歯根端切除術を取り扱っていることを明確にしている歯科医院で相談してみてくださいね。

抜歯


根管治療や歯根端切除術では改善する見込みがない場合、最終的には抜歯になります。

歯根が縦に折れていたり、歯根の壁に穴が開いている場合、根管治療を行ってもその隙間から菌が入り込んでしまい、嚢胞やサイナストラクトが治らない・再発してしまいます。

嚢胞が大きくなり歯を支える骨が大きく溶けると、抜歯をして歯ごと嚢胞を取り除いた後も、骨の回復には時間がかかります。また、骨が完全に回復しないケースも。

骨が元に戻らない場合、インプラントが難しくなったり入れ歯が安定しにくくなるなどのデメリットが生じてしまいます。

抜歯には抵抗があるかもしれませんが、嚢胞やサイナストラクトを長期間放置しているとこのような大きなリスクにつながります。

抜歯の必要があると診断されたら、よく検討してその後の治療方法や抜歯のタイミングについて相談してみてくださいね。

まとめ

サイナストラクトは自然治癒することはなく、口内炎や単なるできものだと思って放っておくと最終的に抜歯しなければいけなくなってしまうかもしれません。

治療には時間や負担がかかりますが、早いうちに正確な治療を行うことがサイナストラクトの治療の一番の近道です。
サイナストラクトかも?と思われる白いできものがある場合は、早めに歯科医院で受診してくださいね。