舌がんとは?


舌がんとは口腔がんの一種で、舌にできたがんのことを言います。
多くは、扁平上皮細胞(へんぺいじょうひさいぼう)という舌の表面を覆う細胞からがんが発生します。

お口の中のがんは舌以外に歯茎や頬、口蓋(顎の裏側)の粘膜などにできますが、舌がんが最も罹患率が高く、口腔がんのうち約50〜60%の割合を占めています。

舌がんの好発年齢は40代〜60代で、発症者の男女比は3:2程度で男性が多い傾向にあります。

舌がんの原因

舌がんを発症する原因はまだ明らかになっていません。
ですが、タバコやアルコールが舌がんのリスクを高めていると考えられています。

というのも、化学物質が含まれるタバコやアルコールは舌を刺激し、刺激により舌の扁平上皮細胞ががん化しやすくなると考察されているのです。

また、虫歯により尖った歯やサイズが合っていない義歯による刺激なども舌がんを発症する原因になると考えられています。

舌への不要な刺激を与えすぎないというのが、舌がんの予防になるのかもしれませんね。

舌がんの受診は歯科・口腔外科へ

舌がんに関しては、歯科・口腔外科・内科・耳鼻咽喉科のいずれかで検査や治療を受けることができます。

ただし、舌がんは口内炎との見分けも難しく、一般の歯科や口腔のがんを専門としない医師では診断できないこともあります。

口内炎か舌がんが不安な場合は、まずはかかりつけの歯科医院やお近くの医療機関を受診してみましょう。
そこで口内炎であると診断されたら、1~2週間ほど経過観察になります。

口内炎と一旦診断されて一向に治らない場合や痛みがひどくなるなどの場合、舌がんを含めた別の疾患が疑われるため、口腔外科を受診することをお勧めします

舌がんの5つの特徴


舌の状態はご自身でもチェックしやすいので、舌の正常な状態を知っておくことで自分で舌がんを早期に発見することができるかもしれません。

舌がんの初期段階では、痛みなどはっきりした症状はあまり出ません
1週間に1度程度、自分の舌を鏡でチェックする習慣をつけてみてくださいね。

初期段階の舌がんの見た目は口内炎に似ています。
「口内炎かな」と思っても、普段より治りが遅い場合やしこりのような違和感がある場合は放置しないで病院で診てもらいましょう。

自分自身で舌をチェックするときに見てほしい5つのポイントを紹介します!

①しこりがある

舌がんでよく見られる所見として、しこりがあります。
初期段階は口内炎に似ていますが、口内炎ができている箇所の付近を触るとしこりを感じるようなら要注意。

舌癌は舌の横側や裏側にもできることがあるので、舌全体をよく確認し、しこりが無いか触ってチェックしてみましょう。

②舌の他の部位よりも赤く(白く)なっている

舌がんの初期の所見として、舌が赤色、もしくは白色っぽく見える見た目の変化が起こることも多いです。

舌の該当箇所と他の部位に色の違いがあれば、口腔外科などでまずは検査してもらいましょう。

③しびれ・麻痺がある

舌を支配する神経ががんの増殖によって圧迫され、舌のしびれや麻痺がある・舌が動かしにくいなどの症状が出ます。
何もしていないのに痺れる場合や、舌の感覚がない、変わったなどがある時は早めに検査を受けましょう。

④味覚が鈍る

舌の表面には味を感じるための味蕾(みらい)という感覚器官があります。

味蕾ががん細胞に侵されると味覚が鈍り、特定の味を感じなくなる場合もあるのです。
今まで食べていたものと味が変わった、味覚が大きく変わった時も歯科などで検査を受けましょう。

⑤出血・痛みがある

舌がんにより出血することもあります。

がんになっている部分が痛々しく出血していても、その見た目ほどの症状を感じないことも特徴のため要注意です。

早期発見のための舌がんと口内炎の詳しい見分け方


早期発見・早期治療が大切な舌がんですが、口内炎とよく似ているため、舌がんと口内炎を見分けるのは素人目では非常に難しいです。

自分自身ではなるべく悪いほうに考えないようにしようとして、放置してしまうこともあるでしょう。
そこで、舌がんと口内炎を見分ける方法を詳しく紹介します。

まず、時間経過による舌がんと口内炎の郭症状の変化を説明します。

口内炎の場合はたいてい1-2週間以内に治ります。
逆に2週間以上経過しても治る様子がなければ、口内炎でない可能性が高いでしょう。

不安な場合は、口内炎を発見した日から写真を撮っておきましょう。
2週間ほど経過しても治らない時に医師に経過の分かる写真を見せることで、医師が舌がんか口内炎を鑑別する手助けにもなります。

また、口内炎の多くは形がはっきりとしていて、円形や楕円形になっていることが目で確認できます。

一方、舌がんは形がいびつで境界が曖昧、硬いしこりができます。
口内炎ではしこりができることはほぼありませんので、症状がある部分を触って確認してみましょう(傷口から菌が入ることがあるため、手をきれいに洗ってから触ってみてくださいね)。

ただし、セルフチェックはあくまでもわかりやすい症状がある場合に見分けられるかもしれないものです。
口腔がんに詳しい医師の検査を受けることが確実ですので、気になる時は病院を受診するようにしましょう。

舌がんの治療法


最後に、舌がんの治療法についてご紹介します。

舌がんの治療法としては、「手術療法」と「放射線治療」の2つがあります。
抗がん剤による化学療法については、手術療法や放射線治療と組み合わせて行われることもありますよ。

手術療法

手術療法は、いわゆるがんができた部位を手術によって摘出する方法です。
手術療法の中でもいくつか種類があり、がんができている部位や大きさなどによって適した手術が選択されます。

具体的には、舌がんが小さく浅い場合には舌の一部を切除する「舌部分切除術」が行われます。

舌がんが舌の中央近くにまで広がっている場合には、がんのある側の半分を切除する「舌半切除術」が行われるのです。
さらに進行している場合には、「舌全摘出術(舌を摘出した後はお腹や太ももの皮膚を移植して再建します)」などでがんを摘出する必要があります。

また、頸部のリンパ節にまでがんが転移しているケースでは、リンパ節と周囲の組織を摘出する「頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)」を行います。

放射線治療・動注化学療法

よく行われる放射線治療は体の外側から放射線を照射する治療で舌の切除を行わないため、舌の形をそのまま残すことができます

通常、25〜30回に分けて照射を行います。
1日1回、週5回を5~6週間継続して行います。

動注化学療法は、舌がんに栄養を送る動脈に抗がん剤を流し込みます。
放射線治療と併用される治療で、単に放射線治療だけの治療よりも治療期間が長くなり副作用なども強くなる傾向にあるものの、がん治療の効果を上げることが期待できるのです。

まとめ

舌がんは口内炎と見間違えて放置してしまうことも少なくなく、見落としてしまうことも多くあります。
治りが遅い、しこりがある、形がいびつである、出血しているなどおかしいと感じたら、早めに口腔外科などの医療機関を受診してくださいね。

一般的な健康診断や人間ドックでは、舌がんに特化した検査項目はありません。
早期発見・早期治療のためには、セルフチェックの他に、歯科などでの定期健診を受けるることが大切です。

舌がんを早期発見・早期治療して、お口の健康を守りましょう。