神経を抜く必要がある虫歯の状態とは?
むし歯の進行の程度によって歯科医師が診断して治療を行います。
むし歯の進行状態はC1〜C4といった4つのステージに分けられています。
※ Cとは、Caries : カリエス。むし歯(う蝕)の略です。
神経を抜く必要があるのはC3の状態で、むし歯が神経(歯髄)まで達している場合となります。
歯の神経について
「歯の神経」は正式には歯髄と呼ばれています。
歯の表面の硬い部分をエナメル質、その内側を象牙質といい、さらにその内部に歯髄があります。
歯髄は、熱いものを熱いと感じ、冷たいものを冷たいと感じるように様々な刺激を脳へ伝達する働きをしています。
また歯髄には血管も含まれているので、歯に血液を供給することにより歯を生かすための栄養や酸素を運ぶ大切な役割をしています。
虫歯の4つのステージ
▷C1 : エナメル質のむし歯
歯の一番表層のエナメル質が蝕(むしば)まれている状態です。
この時点では痛みを感じることは少ないです。
▷C2 : 象牙質のむし歯
エナメル質の内側の象牙質にまで達したむし歯です。
冷たいものや甘いものがしみる場合があります。
この段階ではまだ歯の神経を残すことができます。
▷C3 : 歯髄まで及ぶむし歯
象牙質内部の歯髄にまで達したむし歯です。
歯髄が炎症を起こしているので何もしていなくても痛みを感じることが多いです。
この段階になると歯の神経を抜く治療が必要となります。
▷C4 : 歯の根だけ残ったむし歯
むし歯がかなり進行して元の歯の形が崩壊し、根っこだけ残った状態です。
痛みがある時期を終え、歯髄が死んでしまった後なので痛みを感じません。
この段階になってしまった場合は抜歯を検討することが多いです。
虫歯以外で神経を抜くケース
神経を抜く治療は、むし歯以外のケースにもあります。
知覚過敏の症状がひどく、日常生活にも支障をきたすような場合は神経を抜くことがあります。
知覚過敏は、夜寝ている間の歯ぎしりや日中のくいしばり、力強いブラッシングにより歯の表層のエナメル質が削れて象牙質がむき出しになることで起こります。
しみどめのお薬やむき出しの部分を保護するように樹脂の詰め物をしても対応できない場合は神経を抜くことがあります。
また外傷により歯にヒビが入った場合にも神経を抜くことがあります。
神経を抜く治療の流れ
神経を抜く治療は抜髄と呼ばれており、次のような流れになります。
① 麻酔をする
② むし歯の部分を削って歯髄が見える状態にする
※この際、歯の高さを落として最終的に入る被せ物の準備も行うことが多く、一時的に歯の見栄えが悪くなります。
見た目や噛み合わせが気になる場合は仮歯を作る可能性もあります。
③ 細い専用の器具を使用し神経をかき出す
※お口の中の唾液が治療中の根の中に入らないようにゴムのシートをかけて治療する場合があります。
少しつらいこともありますが、唾液中の細菌の侵入を防ぐ大事な作業です。
④ 根っこの中を殺菌し、消毒薬を入れる
⑤ 仮蓋をする
※治療後、麻酔が切れた後はしばらく痛みが続くことがあるので鎮痛剤を処方されることがあります。
治療当日は仮蓋が固まるまでに少し時間がかかることと、麻酔が切れるまでに食事すると舌を噛んでしまっても気づかないなどのリスクがあり危険なので、麻酔が切れてからのお食事をおすすめいたします。
抜髄したからといってその日に根の治療が全て終わるわけではなく、むし歯菌により炎症を起こした歯が無菌になるまで治療が続きます。
歯医者での治療回数の多さに不満を持たれる方もおられますが、根の治療に何度も回数がかかるのは、根の中の症状がなくなるまで洗浄をし続けるからなのです。
地道な作業ですが、十分に殺菌する前に急いで治療を終えようとしてしまうと再治療の可能性が高まりますので根気強く治していきましょう。
神経を抜いた後の治療の流れ
抜髄後は根の中のお掃除、消毒を1週間ごとくらいで続け、症状がなくなれば神経を抜いた部分に神経の代わりになるようなゴム状のつめ物を入れます。
つめ物は造影剤が入った材料なので、レントゲン写真を撮り、根の中にぴったりと入っているかを確認します。
その後は歯の芯となる土台を立て、その上に被せ物が入る流れとなります。
神経を抜いた後の歯の状態と症状
神経を抜いた歯は、抜く前や神経を抜いていない歯と比べて変化がみられます。
歯がもろくなる
歯髄は先述のように血管を含んでおり水分や栄養を歯に送っていますが、神経を抜くとその働きがなくなるので歯がもろくなります。
枯れ木のようなイメージで、中に水分がないので外からの刺激に弱く、強い圧力がかかると折れてしまうリスクが高まります。
また歯がもろくなってしまうのでその分寿命も短くなります。
抜髄後の15年生存率は50%と言われているため、できれば神経は残しておきたいものです。
歯が変色する
時間が経つと黒っぽく変色することがあります。
血液の成分などが歯の内側の層である象牙質の細い管の中に入り込み、それが時間を経て黒っぽくなっていくためです。
血液の循環がないので入り込んだ成分が代謝されず、沈着していくことで黒くなります。
この状態になると一般的なホワイトニングをしても歯を白くすることが難しいです。
虫歯に気が付きにくくなる
神経がなくなると痛みを感じないので、二次的にむし歯になってきた場合も気づかないうちに進行してしまうことがあります。
その場合再度治療が必要となります。
このように神経を抜くことのデメリットは多く、将来的に健康な状態を維持するためにはむし歯の早期発見・早期治療、そして何よりむし歯にならないためこ予防がとても大切です。
まとめ
できれば神経を抜く治療には至りたくないものですが、その治療が必要と判断された場合は、間隔を空けずに通院し、適切な治療を受けましょう。
また、治療後の経過観察もとても大切です。
二次的にむし歯になっていないか、再発していないかを確認してもらうためにも半年に一回は定期検診を受け、最低でも一年に一回はレントゲン写真によるチェックを受けましょう。