日本皆歯科健診導入が盛り込まれた「骨太の方針」とは
2001年から自民党により毎年発表されている経済財政運営方針の「骨太の方針」の中に「国民皆歯科健診」の導入を検討する方針が今年初めて盛り込まれました。
日本歯科医師会によると、国民皆歯科健診を実施することでより多くの国民に受けてもらいたいという考えがあり、今後3年から5年をめどに実施される予定です。
日本の歯科検診の現状
日本歯科医師会が国民に歯科健診を受診して欲しいという理由で、国民皆歯科健診(健康状態を知るための検査)の推進が骨太の方針に盛り込まれました。
既に実施されている歯科検診(虫歯や歯周病などの病気を早期に見つけるための検査)の制度では誰が対象になっており、受診率はどのくらいなのでしょうか。
まず、現状の歯科検診の主な対象は高校生までとなっており、学校で歯科検診を定期的に受けることが義務付けられています。
大学生や社会人に関しては義務付けられていません(社会人になると自治体の実施する歯科検診や企業歯科検診などを受けることが可能ですが、義務ではありません)。
次に、歯科検診の受診率ですが、とある自治体の調査によると、20歳代で過去1年間に受診をした者はH21年の国民健康・栄養調査では約30%で、平成28年は43%というデータがあります。
調査対象が20歳代に限定されていますが、半分を下回っているので、受診率が良いとは言えません。
国民皆歯科健診が義務化されるとどうなるの?義務化の目的は?
国民皆歯科健診を義務化する主な理由としては、「健康の増進」と「健康寿命の延伸」です。
「口は万病のもと」と言われるように、口腔内疾患が全身の疾患発症に関係すると考えられ、研究も近年盛んに行われています。
日本皆歯科健診の実施により、口腔内の健康を保つことで全身の健康維持を図り、健康寿命を延ばし、加えて医療費の抑制も期待されています。
多くの方が歯周病によって糖尿病の状態が悪くなったり、誤嚥性肺炎の発症リスクが高くなったりする可能性があることを認知していますが、まだまだ不十分です。
国民皆歯科健診の実施に関して国民から支持を得るためには、口腔内疾患が全身疾患と関連していることについて更なるエビデンスを積み重ねて周知していく必要があるでしょう。
まとめ
日本歯科医師会は「国民皆歯科健診の仕組みをどうするかなど、課題は多い。制度を具体的にどうしていくかは検討が必要である」と記者会見で述べています。
今後3年から5年をめどに推し進めていく意思表示をしていますが、実際に国民皆歯科健診が実施されるのは遅れるかもしれません。
国民皆歯科健診が実施されないにしても、定期的に歯科医院を受診することは非常に大切なことです。
お口の中に歯や歯茎の痛みがなくても、虫歯や歯周病が進行していることは多々あります。
気づかずに歯周病や虫歯が進行してしまい、歯科医院の受診が遅れて、虫歯の治療に予想以上に時間がかかった、歯周病でグラグラしている歯を抜歯することになってしまったなどは歯科の現場ではよく見る光景です。
国民皆歯科健診が今後実施されることになれば、虫歯や歯周病により歯を失う機会が減ることが期待できるでしょう。
本記事を通じ、国民皆歯科健診を受けることは皆さんの普段の口腔内の健康状態を知る良い機会になると思っていただければ、嬉しい限りです。