実際にはない副作用?「ノセボ効果」とは
ノセボ効果とは、薬を飲んだ後に「この薬で副作用が出るのではないか」といった薬の副作用に対する懸念が高まり、実際にはない副作用がマイナスな症状として現れることを言います。
一方、副作用がプラスに出る場合(偽薬でも効果がみられる場合)はプラセボ効果と呼びます。
また、医師への不信感や治療への不安感からもノセボ効果が現れることもあります。
ノセボ効果が現れるのは、一般的に風評や思い込み、条件づけや薬の色によるイメージなどが影響すると考えられていますが、そのメカニズムはまだ完全に解明していません。
薬は副作用が起こると「医薬品医療機器総合機構」という組織に報告され、医療従事者らが情報を共有することができるシステムがあります。
しかし、ノセボ効果による副作用は思い込みによっておこるため、報告されていない副作用が出ることもあるのです。
副作用とは
副作用は、一般的には薬によって起こる好ましくない作用のことだと考えられています。
しかし実際の意味は「薬の主作用ではない作用」、すなわち求める効果以外の効果が出てしまうこととされているんです。
患者さんには眠気や倦怠感などをはじめとした身体への悪影響がある副作用が一般的に伝えられますが、そのほかに身体に害のない、よい副作用も伴うことがあります。
副作用が現れる原因はさまざまなため、本当に薬の副作用によるものなのか判断するのは難しいものがあります。
副作用は薬の性質だけではなく、飲み方や体調、精神面などさまざまな要因によって左右されると考えられているのです。
そのため、副作用には個人差があるとされています。
その中でも「副作用が出る」と思い込むノセボ効果で現れる主な症状として、頭痛や眠気、めまい、倦怠感、消化器系の症状や不特定愁訴などが挙げられます。
実際の副作用ではこうした症状のほか、発疹やアレルギー、胃腸障害、腎障害、肝障害などが起きる場合があります。
ノセボ効果による副作用が9割!?
イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンのチームによる臨床研究では、「スタチン」という脂肪異常症の薬を服用した人が感じた倦怠感などの副作用の9割は薬に含まれる成分とは無関係だったという結果が報告されたことも。
この研究では、加齢によって起きた症状を副作用と感じた被験者もいたのではないかと見られています。
しかし、こうしたノセボ効果によって服用を中断・拒否する患者さんも少なくありません。
自分自身では思い込みの副作用、ノセボ効果は出ないと考えたくなりますが、副作用の不安を無意識下で感じているだけでも出ることがあるのです。
“思い込み”にも効果はある
「思い込むことによって効果が出る」とよく耳にしませんか?
効果を期待する患者さんの気持ちが有益に現れるプラセボ効果。
すべての患者さんに同じ説明をしたうえで、患者さんのうちの半分には実際に有効成分の含まれている薬を、もう半部には有効成分が含まれていない薬を処方した場合、有効成分が含まれていない薬を服用しても同じ効果、あるいはそれ以上の効果が現れるという研究結果はたくさんあります。
良くなるという思い込みに効果があるならば、悪くなるという思い込みで悪くなることも十分に考えられますよね。
ノセボ効果を防ぐためには?
ノセボ効果による副作用は改善が難しかったり、時間がかかることも。
また、実際に起こり得る副作用とノセボ効果が合わさり、重い症状となってしまうこともあります。
ノセボ効果を起こさないために心掛けたい3つのポイントをご紹介します。
良い効果を意識する
ノセボ効果は、意識や考え方によって副作用や副反応が出ると考えられています。
なので、まずは「薬の良い面」を意識してみましょう。
なぜ薬を飲むのか、それは薬によって悩んでいる症状が改善されるという「服薬のメリット」があるためです。
通常は、メリットのない薬を処方されることはありません。
副作用が出る可能性よりも、たとえ副作用の症状が出たとしても、現在お悩みの症状や疾患が改善されるメリットの方が大きいため処方されている、という風に考えるようにしてみるといいかもしれませんね。
副作用を意識しすぎないようにする
副作用が報告されている薬を処方する場合は、医師や薬剤師などの医療従事者は患者さんに副作用について説明する義務があります。
人はメリットよりもデメリットを重く感じてしまう傾向にあると言われており、副作用を説明されると有効効果よりも副作用が気になってしまうかもしれません。
ですが、患者さんに副作用の可能性があることを知らせるのは、身体に異変があった時はすぐに相談ができるからという理由もあります。
眠気の副作用が強い薬の場合は、運転を控えたり、長時間の外出を控えるなどの対策をとれると安心して日常生活ができますよね。
副作用はすべての人に起こるものではありません。
心配しすぎないことも、薬の効果を発揮するうえでは大切かもしれませんね。
医師との信頼関係を築く
薬の効果を前向きに捉えたり、副作用を意識しすぎないようにするためには、医師や薬剤師との信頼関係も大切になってきます。
医師の説明に不信感や不安があると、薬についてもデメリットが気になってしまいますよね。
また、いつでも相談できる、いつでも対応してくれると思える医師がいることで副作用への心配を減らすことができます。
普段からかかりつけ医など、信頼と相談ができる医師を見つけておきましょう。
急遽、かかりつけ医以外の医師にかかる時も、気になる点をしっかり聞いて納得したうえで薬を飲めるとノセボ効果の予防になりますよ。
まとめ
ノセボ効果は服薬だけでなく、ワクチンによっても起こる可能性があります。
新型コロナワクチンの接種が始まり、副反応が気になるかたも多いのではないでしょうか。
インターネット上ではワクチン接種者の副反応の経験談や、起こり得る可能性のある副反応についての噂がたくさんあります。
実際に起きた症状だとしてもワクチン接種の副反応ではなく、実はノセボ効果によって起きた副反応かもしれませんね。
また、それらの記事を読むことで副反応への不安が強まり、知らず知らずのうちにノセボ効果を招いてしまうかも。
まずは正しい情報を収集することを心掛けましょう。
ワクチン投与を行う医師への相談や、普段から信頼している医師の見解を聞いて不安をなくしてから接種してみてもいいかもしれませんね。