気管支喘息とは

「気管支喘息」は、気管支に炎症が起こることによって空気の通り道が狭くなってしまい、呼吸が苦しくなる発作を繰り返す病気です。

呼吸をすると「ヒューヒュー」または「ゼーゼー」とした音(喘鳴)がする、息苦しく感じるなどの症状があります。

喉と肺をつなぐ空気の通り道は「気管」と「気管支」に分けられます。
喉から肺まで空気が通るところを「気管」、左右の肺へと枝分かれするところを「気管支」と呼びます。

気管支がほこりやタバコなどによるアレルギー反応によって炎症や気管支の収縮が引き起こされることにより、喘息の発作が起こるとされています。

気管支喘息は治療をせず放置していると炎症が悪化する傾向にあり、ごくまれですが死に至るケースもあります。

気管支喘息

また、喘息の中には、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった息苦しさはなく、咳が出るものもあります。

これは「咳喘息」と呼ばれるもので、気管支喘息とは異なります。
ただし、咳喘息から気管支喘息に移行するケースもあるため、しっかりと治療しておくことが大切ですよ。

喘息の原因

気管支喘息 原因

成人の気管支喘息の患者さんの多くは、症状を引き起こすアレルゲンを特定できない「非アトピー型」です。
一方、アレルギー反応の原因が特定できているものを「アトピー型喘息」といいます。

アレルゲンを特定する方法としては、皮膚のアレルギー反応を見る検査やや血液検査などがありますがほとんどの場合、原因の解明に至らないのが現状です。

症状を悪化させる要因としては、以下のようなものが挙げられます。

・花粉
・ほこり
・ダニ
・動物の毛
・カビ
・激しい運動
・喫煙(受動喫煙を含む)
・天候の変化
・飲酒
・特定の食べ物
・ストレス
など

気管支喘息の発作が起きるメカニズムとして典型的な例は、原因物質を大量に吸い込むことです。

家の中は、ダニやほこり、カビといった、喘息の原因になりうるものが繁殖しやすい空間です。
アレルギー反応を誘発する物質は生活のあらゆるところに潜んでいるので、非アトピー型の気管支喘息であってもこうした室内環境に注意してみてくださいね。

気管支喘息の治療

気管支喘息 治療

気管支喘息を治すためには、まず発作が起きないようにすることが大切です。

予防する方法として、アレルゲンの対策、薬物療法、体力作りが大きな柱となります。

予防に力を入れることも大切ですが発作が起きたときの対策をしっかり準備しておいてくださいね。

室内環境の改善

気管支喘息 室内環境

まずは、アレルゲンとして考えられる物質と距離を取って生活してみましょう。
アレルギー検査では反応が出ない場合も、ほこりやダニは身体にとっていいものではありません。

同居する方に喫煙者がいれば室内では吸わないようにしてもらう、ペットを飼わないようにするといった対策のほか、ダニやほこりがたまらないようこまめに掃除をするなど室内環境を整えることも重要です。

気管支喘息の症状が急激に悪化した場合は、手の届かない高いところや家具の裏まで掃除してみましょう。
空気清浄機の設置も効果的ですよ。

特に、ダニがたまりやすい布団やカーペットなど布類の管理は特に注意して行ってみてくださいね。

薬物療法

気管支喘息 薬

気管支喘息の治療に使われる薬は、気管支の炎症を抑え発作を起こらないようにするための薬と、発作が起こってしまった時に抑えるための薬の2種類があります。

気管支喘息に使用される薬は、気管支の炎症を抑えて発作を抑制するための吸入・経口ステロイド薬、気管支を拡張するためのテオフィリン除放製剤、長時間作用型β2刺激薬、長時間作用性抗コリン薬などさまざまです。

気管支喘息治療によく使用されるステロイド吸入器は、定量噴霧型吸入器やドライパウダー型吸入薬と呼ばれており、お口の中にステロイドが残ってしまう、うまく吸い込めないと効果が薄れてしまうなどの問題点があります。

気管支喘息 吸入

ステロイド吸入器で症状が治まらない場合はネブライザーと呼ばれる、薬剤を霧状にして吸い込む吸入器を使用することで、確実に素早く気管支に早薬を届ける方法もあります。

ネブライザーは吸入器に比べてサイズが少し大きくなりますが、子供や高齢者でも確実に薬を吸い込めることがメリットです。

ネブライザーは病院で使うイメージが強いですが、家庭用、持ち運び用の小さめのサイズも普及しています。

気管支喘息の発作は服薬によって治まります。
しかし、発作が治まったからと言って自己判断で服薬を中止しないようにしましょう

気管支喘息の薬は、気管支の炎症が治まるまで続けることが大切ですよ。

生活習慣

気管支喘息 生活習慣

ストレスを抱えることも、気管支喘息を誘発するといわれています。

働きすぎや、それに付随した睡眠不足もストレスになり得るほか、不規則な生活もストレスと関わりがあります。

まずは自分自身で早寝早起きと正しい食生活を心掛けてみるとよいかもしれませんね。

禁煙

気管支喘息 禁煙

タバコから出る煙は気管支の炎症を悪化させてしまうといわれています。
もちろん、受動喫煙による煙も同様です。

気管支喘息の患者さんの禁煙も大切ですが、身の回りの喫煙者にも禁煙に協力してもらいましょう

食事先では禁煙席を選ぶ、喫煙所には近付かないなどの対策もしてみるのもよいかもしれませんね。

適度な運動

気管支喘息 運動療法

気管支喘息を患っていても、運動を制限する必要はありません
適度に体を動かして体力作りに努めることは発作を抑えるうえでも大切です。

最初は毎日一定距離の散歩を行う、ヨガやストレッチをして体を温めるなどして体を慣れさせるようにしてみましょう。

慣れてきたら医師の指示の元、ランニングや球技、水泳など運動の幅を広げてみてもいいかもしれませんよ。

発作が起こってしまった直後の運動は避けたほうがよいでしょう。
激しい運動、長時間に渡る運動、冷たく乾燥した空気の中での運動は発作を誘発するケースもあるため注意が必要です。

万が一発作が起きた時のために、短時間作用型の発作を抑える薬を持っておくようにしてくださいね。
また、喉に違和感を感じた場合などは運動を中止しましょう。

カフェインは気管支喘息の発作に効果がある?

気管支喘息 カフェイン

気管支喘息の発作が起こってしまった時、薬を持っていなかったらコーヒーを飲むとよい、と聞いたことはありませんか?

それはコーヒーに含まれているカフェインに気管支喘息を改善する効果があるのではないか、と言われているからなのです。

カフェインは、気管支拡張剤として使用されるテオフィリンという薬に似た構造を持つとされています。
そのため、カフェインの摂取によってテオフィリンと同様の効果が得られるのではないか、ということです。

しかし現在のところカフェインによって喘息が改善するかどうかは明確になっていません

カフェインによって4時間程度、気道機能が改善する、という報告(Cochrane:喘息患者におけるカフェインの効果 2021-04-07)もありますが、気管支喘息の改善を目的としてカフェインを多量に摂取することは避けたほうがよいでしょう。

カフェインの多量摂取は危険!

気管支喘息 コーヒー

また、カフェインそのものが体に与える影響にも注意が必要です。

カフェインは中枢神経系を刺激し、興奮やめまい、不眠症、不安といった症状を引き起こすことがあり、摂取量によっては中毒につながる可能性もあります。

農林水産省Webサイトによると、カナダ保健省ではカフェインの摂取量について
「健康な大人は、1日当たり400mg(コーヒーは、237mL(8オンス)カップで3杯まで)」
とするよう注意を促しており、国内外で摂取を適量に抑えることが推奨されています。

また、現在テオフィリンを服用している方は、カフェインを多量に摂取してしまうと、テオフィリンが最大限の効果を発揮できない可能性も指摘されており、コーヒーの飲用は避けるように指示されることもあり、自己判断でカフェインを摂取してしまうことは危険です。

気管支喘息の治療は、基本的には処方されている薬を適切に使うことが原則です。

これまで長く喘息の症状に悩まされてきたという方も、室内をきれいにするよう心がけたり、医師に改めて相談したりすることで良い結果につながるかもしれません。

この記事で、気管支喘息をもつあなたの不安が少しでも解消できれば幸いです。