日本の歯科医院は「予防」ではなく「治療」に行くところ

日本の歯科医院は「予防」ではなく「治療」に行くところ

編集部:イクシーファミリー歯科のこだわりをお聞かせください。

安部先生:日本の保険制度には予防がないので、歯が痛くなったり、ぐらぐらになってから歯科医院に行って、削ったり抜いたりを死ぬまで繰り返しているのが現状です。

しかし、スウェーデンでは入れ歯の方がほとんどいないんです。日本との大きな違いは、スウェーデンは公的医療保険が治療には適用されず、予防だけに適用されるという点が挙げられるのではないでしょうか。

そのため、歯科医院に治療に行く方がほとんどいなくて、虫歯にならないため、入れ歯にもならない。「予防」のために行くところなんですね。

安部秀弘先生

先ほども申し上げましたが、日本は歯科医院に歯が痛くなったり、ぐらぐらになったりしてから「治療」のために行く。そうすると、85歳までに大体5,6本ぐらいしか歯が残せず食べ物が食べられなくなる、経口(口から食事を食べること)維持ができなくなってしまうのです。

食べ物が食べられなくなると体は徐々に弱ってしまい、介護になってしまう。このまま介護が増え続けると、30年後には2人に1人は介護という勢いです。
日本の保険制度には予防がなく、このままではまずい、何とかしなければとの想いから「社会を変えていかなきゃいけない」という強いこだわりを持って日々診療を行っています。

社会を変えるために一般社団法人 日本口育協会を設立

社会を変えるために一般社団法人 日本口育協会を設立

編集部:先生の口育に関する書籍で「口育を通じてお口周りから全身の健康な発育を目指す」と拝読いたしました。この口育を普及させるために日本口育協会を設立した経緯を詳しくお聞かせください。

安部先生:お口は、人生の「始まり」から「終わり」まで、生涯にわたり人間らしい生活を営むためにとても重要な器官だと考えています。
その考えを基に「世界人類が正常な呼吸と嚥下を獲得し、正常な心身の発育と姿形を獲得できるようになる為に口育を世界中に普及させる」ことを目的とし一般社団法人 日本口育協会を設立しました。

日本口育協会を設立後、「口育士」という資格制度を作り、現在約2,000名まで増えてきました。今後もどんどん口育士を増やしていきたいと思っています。

日本の現状は世界一介護が多くて、介護が必要な人が増える率も世界一なんです。このまま何もしなければおそらく国は潰れてしまうのではないかと危惧しています。そんな社会を変えるため、保険の制度を変えるため、予防が公的医療保険で行えるようにするために日本口育協会を通じて書籍の発行やセミナーなど全国の歯科医院と啓蒙活動を行っています。

日本がもう一回元気になって、なんとか上に行くためにできることを実践していきたいですね。

口腔機能発達不全症の予防が健康に繋がる

口腔機能発達不全症の予防が健康に繋がる

編集部:日本口育協会のホームページに、「子供のころから口腔機能を発達させ、成長発達させることを目指します」このように記載されていますが、子供のころからお口の疾患とか、お口に関する機能の喪失の予防をすること、また大人になってからでも口腔機能発達不全症の予防をすることは可能なのでしょうか。

安部先生:「口腔機能発達不全症」という病ができたのはここ1、2年なんです。公的医療保険の病名として口腔機能発達不全症というのができて、0歳から15歳までが適用範囲となっています。
そして、「口腔機能低下症」は65歳以上の高齢期の方が対象です。
「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」この二つがセットで病名になっているんですね。
日本でも一部の先生は口腔機能発達不全症という問題についてはよく理解していますが、私が口腔機能発達不全症に気づいたのはだいたい6、7年前になるでしょうか。

安部秀弘先生

口腔機能というのは嚥下とか呼吸の問題なのですが、嚥下機能が正常に発達しないと、いつも口を開いてる出っ歯で歯並び悪い状態になってしまいます。
口呼吸している子供の特徴として、体が前傾姿勢で虚弱体質の傾向にあります。したがって、本来の遺伝子通りの能力や姿形になっていないと感じます。

具体的に口腔機能発達不全症を予防するためには、正常な機能発達、成長が得られるように口腔機能の正しい発達を促す指導のひとつ、MFT(口腔筋機能療法)が重要です。
MFTでお口周りの筋肉や舌の動きを改善・トレーニングを行うことで、口腔機能発達不全や機能低下を防いで正常な発達を促進し、きれいな歯並びにも繋げられます。

また、65歳以上の方を対象にした口腔機能低下症の予防に対する取り組みとして、栄養学、口育栄養学というものを構築しています。新しい知識や考え方で、人が健康になっていくために何の栄養を摂ったらいいのか、どのように食べた、どのように呼吸すべきなのかに注力しています。

日本では一番大切なものが命で命に大切なもの、それが健康

日本では一番大切なものが命で命に大切なもの、それが健康

編集部:患者さんに向けてメッセージをお願いします。

安部先生:日本も少しずつですが、虫歯の予防がちゃんとできるようになってきています。
しかし、歯磨きでは取れない汚れや歯石を定期的に取るようになった、ようやくそこまで行ったとしても、口腔機能がちゃんと正常に高まっていないと、すべてが台無しになってしまいます。

だから子供のころから口腔機能をしっかり定めていかないといけません。それは咬合(噛み合わせ)の維持、歯を予防で守っていくっていう、その形態的なものの維持と、機能的な維持をちゃんと組み合わせていくことが大切です。
歯を守るだけじゃなくて、お口全体を守らないといけない、機能を正常に発達させていかないと結局その目的を達成できないのではないでしょうか。

最終的な目標は、年取っても何でもバリバリ食べられて介護のない社会というのを作っていくために進んでいきます。

ヒトが生きている間に人間らしい生活ができるかどうか、それが重要です。そのためには生きる象徴、バリバリ美味しくなんでも食べる、人と会って笑うことで心も体も健康になるのではないでしょうか。
そのために歯医者の役割は、関わる全ての方と繋ぎ合わせていくお手伝いができる場所だと思っています。

とにかく、健康であるということがものすごく人生で重要なんだっていうことですね。
以外に日本って健康な国ってイメージ持った方が多いですけど、日本は健康医学そういったものが遅れているっていうのを考えて、意識して健康になるための努力をしてほしいですね。

【ドクター情報】

イクシーファミリー口腔歯科・小児・矯正歯科

理事長:安部 秀弘

・歯科医師