パニック障害の方が「歯医者さんが怖い」と感じる理由
パニック障害とは、「突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作(パニック発作)を起こし、そのために生活に支障が出ている状態」 (厚生労働省)です。
では、パニック障害をお持ちの方は、どのような理由で歯医者さんが怖いと感じるのでしょうか?
・歯科用ユニット(治療中に座るイス)に座ると、そこから出られないと感じてしまう
・診療のイスを倒されると呼吸が苦しくなる
・喉が渇くのを恐れてずっと口を開けられない
・目にタオルをかけられ、見えなくなることに不安に感じる
・治療の痛みを想像してしまう
・歯医者さんに怒られるのではないか
・治療器具に恐怖を感じる
パニック発作はコントロールするのが難しく、再び発作が起きるのを恐れてパニックになりそうな場所や状況を避けてしまう患者さんも多いそう。
過去に歯医者さんでパニック発作を起こしたことがある患者さんは恐怖心を持ってしまうことが多いようです。
歯医者さん以外も、特定の場所を恐れてしまうことや、また発作が起きないか心配してしまう「予期不安」も、パニック障害の特徴ですね。
ですが、虫歯や歯周病は放置しているとどんどん悪化してしまうもの。
わかっているけど歯医者さんが怖い、というパニック障害をお持ちの患者さんはどうしたらいいのでしょうか?
歯医者さんに通ううえで覚えておきたいポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
歯医者さんにパニック障害と伝えても大丈夫?
歯医者さんに限らず、他人に「自分はパニック障害がある」と伝えるのは勇気がいることですよね。
でも、歯医者さんには治療を始める前に伝えておきましょう。
歯医者さんはパニック発作が起こりやすい場所。歯科医師も、それを理解している人が多いので伝えても大丈夫ですよ。
歯医者さんから「パニック発作が起きても対応できますよ」「パニック障害を持つ患者さんも来院されていますよ」などと聞いておくことで安心でき、パニック発作が起きる可能性が下がるかも。
万が一、パニック発作の対応は難しいと言われたらそこの歯医者さんへの通院は避けておきましょう。
患者さんが心から安心して通えると思えた歯医者さんに通ってみてくださいね。
歯医者さんに伝えておきたい4つのポイント
「対応できますよ」という歯医者さんでも、患者さんのパニック障害の程度はわからないもの。
また、どんな配慮が必要なのか、患者さんがパニック発作を起こした時にしてほしいことは何か、はわかりません。
そのため、治療を受ける前に歯医者さんに以下の4つのことを伝えてみてください。
・緊急連絡先
発作が起きて苦しく感じたときのために緊急連絡先を伝えておきましょう。
迎えに来てくれる家族の連絡先でもいいですし、パニック障害で通っている病院の連絡先でも構いません。
歯医者さんの方が遅くまでやっている場合は、パニック障害の通院先に繋がらない場合の緊急連絡先も用意しておくといいですよ。
お守りのつもりで伝えることで、安心材料になるかもしれません。
・頓服薬の有無
パニック発作が起きた時用の抗不安薬などの頓服薬を持っているかどうかを伝えておきましょう。
薬がどこにあるかや使い方を歯医者さんと共有しておくことで、万が一の時に少しでも早く対応してもらえるようになりますよ。
・過去に発作が起きた状況について
これまでに歯医者さんで発作が起きたという経験がある場合、どんな時に発作が起きたのかを伝えておきましょう。
発作が起きた状況をなるべく避けてもらえるよう配慮してくれるかもしれません。
また、歯医者さん以外で発作が起きた時のこともできる限り伝えておきたいですね。
口で説明するのが辛い場合は、紙に書いて渡すのでもOKです。
・予約どおりに通院できない可能性がある
パニック障害は、日によって急に不安感が強くなることもあります。
また、歯医者さんに行く前に発作が起きて通院ができないことも。
予約日に急に通院ができなくなることがあることを伝えておくと、万が一行けなくなった時にも連絡がしやすいですよ。
歯医者さんはパニック障害の詳しい特徴までは把握できていないことも多くあります。
また、パニック障害の症状や発生場面は患者さんごとで個人差もあり、言わずにわかってもらうというのは中々難しいものです。
患者さんによって、歯医者さんにやってほしいこと・やってほしくないことも異なります。
まずは担当になる歯科医師とゆっくりしっかり話して、お互いの不安や疑問、わからない点を解消していきましょう。
安心して歯医者さんに行くためにできること
歯医者さんにいろいろ伝えても、全部の不安がなくなることはないでしょう。
安心して歯医者さんに行くために、患者さんが事前にできることをご紹介します!
頓服薬を飲む
パニック障害では、パニック発作が起こりやすい環境に行く前やパニック発作を起こしたくない時に飲む抗不安薬などの頓服薬が処方されることがあります。
事前に、パニック障害で通院している病院の担当医に相談し、歯医者さんに行くことへの不安を伝え、必要に応じて飲むようにしましょう。
メンタルクリニックで事前に相談しておく
歯医者さんに行くことを事前に相談しておくことで、パニック障害の担当医から見て気を付けたいポイントや伝えておきたい症状を教えてもらえるかもしれません。
また、深呼吸などリラックスする呼吸法を教えてもらえたり、歯医者さんの何が怖いかを一緒にカウンセリングしてもらえることも。
歯医者さんに緊急連絡先として通院している病院を教える場合は、先に担当医に連絡先の共有のことを伝えるようにしてくださいね。
空いている時間帯に通院する
歯医者さんのスタッフたちが忙しく動いている光景や、他の患者さんの治療の音で不安が高まってしまうことがあります。
歯医者さんによっては、患者さんがユニット(治療用の椅子)で1人になる時間ができてしまうことも。
混みやすい夕方や休日などを避け、比較的空いている平日の昼間などに可能なら通院してみてくださいね。混むタイミングは歯医者さんによってそれぞれなので、空いている時間を歯医者さんに聞いてみましょう。
事前に治療内容についてよく説明を受けておく
歯医者さんでは専門的な治療が多く、「虫歯の治療をします」「歯石を取ります」など大まかな説明のみで、患者さんにどのような器具を使ってどのような手順で治療するかをあまり説明しないケースもあります。
何をするか知らないまま治療を受けるのは不安が大きくなる傾向にありますので、治療を受ける前に患者さんが納得できるまで治療内容を説明してもらうのも効果的です。
初めは相談、簡単な治療から始める
歯医者さんに行くだけでも緊張感がありますし、誰でも慣れない場所は不安に感じやすいものです。
慣れるまでは大掛かりな治療は避け、簡単な治療から慣れていきましょう。
1番最初の通院は治療をせず、歯医者さんとの相談(カウンセリング)やお口の中のチェックだけでも十分です。
パニック障害患者の治療歴がある歯医者さんを探す
上記でご紹介したように、事前に話しておけば対応してもらえる歯医者さんが多いですが、それでも不安なこともありますよね。
その場合は、HPなどでパニック障害の患者さんの受け入れを記載している歯医者さんや、パニック障害の患者さんの治療歴が掲載されている歯医者さんを選んでみるのも良いかもしれません。
ですが結局は患者さんと担当の歯科医師との相性もあります。
HPや体験談は、自分自身で「ここなら大丈夫」と思える歯医者さんを探す入り口くらいに思っておきましょう。
担当制の歯医者さんを選ぶ
歯医者さんによっては、通院するたびに歯科医師が変わることもあります。
ですが、通院するたびに担当が変わってしまうと、パニック障害の症状などについての共有が上手くできないなどが考えられますので、担当医制の歯医者さんを選びましょう。
先生が変わると信頼関係が築きにくく、いつまで経っても不安を感じることになってしまうかも。
担当の歯科医師が決まっている、かかりつけ医になってくれる歯医者さんを探してみてくださいね。
リラックスしてできる歯科治療
それでもどうしても歯医者さんが怖い場合は、薬を使ってリラックスして歯科治療を受ける方法があります。
静脈内鎮静法
恐怖や不安を軽減する薬を点滴や注射で注入してリラックスして治療を受ける方法です。
パニック障害のほか、嘔吐反射が強い方も受けられます。
静脈内鎮静法によって治療を受けている間は半分眠ったような状態になり、心身ともにリラックスできますよ。
麻酔科での経験も必要で受けられる歯医者さんはあまり多くありません。
笑気吸入鎮静法
笑気と酸素の混合ガスを吸うことで、鎮静・睡眠の効果がありリラックスして治療を受ける方法です。
点滴を取る必要はありません。
ただし、ガス吸入の際に鼻マスクを着用することでパニック発作を誘発する可能性もあるので、よく相談してから選びましょう。また、鼻づまりがあると利用できません。
静脈内鎮静法も笑気吸入鎮静法も、痛みが全くなくなるわけではありません。
また、どちらも当日帰宅ができますが、車の運転を制限したり、食事制限が行われる可能性がありますので、担当の歯科医師と事前によく相談してくださいね。
家で歯科治療を受けられる訪問歯科
歯医者さんに行くのがどうしても怖いという場合は、歯科医師やスタッフが患者さんの自宅で治療をする「訪問歯科」を検討してみてはいかがでしょうか。
歯医者さんで受けるよりも器具や器材、受けられる治療方法が限られてしまうこともありますが、歯医者さんに行かなくて済むのは大きなメリットです。
ですが、訪問歯科は健康保険ではなく介護保険や障害者医療補助で行われています。
地域によってはパニック障害では補助がなく、全額自己負担の地域もありますので、訪問歯科を行っている歯医者さんへ相談してみましょう。
まとめ
パニック障害は自分自身でのコントロールは難しく、歯医者さんへ行くのも難しいことも多くあります。
なかなか患者さんの意思だけで歯医者さんに通えるようになるのは難しいでしょう。
まずは、パニック障害に理解のある歯医者さんを探してみましょう。
それから、患者さんが安心できる・この先生なら治療を受けられるかもしれないと思えた歯科医師の治療を受けてみてください。
虫歯や歯周病など、お口の中の病気は進行性のため、自然治癒はありません。焦ったり急いで治療をすると、より恐怖が強くなってしまうかもしれません。
担当の歯科医師と時間をかけて信頼関係を築くことができる、かかりつけ医として長く通える歯医者さんを探してみてくださいね。