非歯原性腫瘍とは

お口の中にできる腫瘍は、まず大きく歯原性腫瘍と非歯原性腫瘍に分けられます。
顎骨の中に生じるものを一般的に歯原性腫瘍と呼び、頬や歯肉などの軟組織にできる腫瘍を非歯原性腫瘍と呼びます。

非歯原性腫瘍は、身体の様々な部分にできる腫瘍と同じであると考えられており、お口の中に発生することも珍しくないのです。
部位としては、舌、口底部、歯肉、頬粘膜など、見つけやすい場所にできることが多い傾向にあります。

非歯原性腫瘍の種類について

非歯原性腫瘍は、極めて多くの種類があります。
代表的なものとしては、口腔粘膜にできる上皮性の乳頭腫をはじめ、非上皮性の線維腫、血管腫、リンパ管腫などが挙げられます。

これらは良性腫瘍のため生命に影響を及ぼすことはほぼありませんが、極稀に悪性化してしまうこともあるのです。
そのため、血管腫やリンパ管腫の一部は例外となりますが、基本的には非歯原性腫瘍は良性ですが摘出あるいは切除を行います。

線維腫

お口の中の粘膜、特に頬の粘膜や舌に見られる腫瘍です。

例えば、歯があたるなどして慢性的に粘膜がこすれたり傷ついたりした場合などに、線維組織が増殖することで発生します。
腫瘍の部分が明確に膨れているため、肉眼で異変がわかります。

乳頭腫

乳頭腫は、皮膚や粘膜の表面に発生する腫瘍です。
舌をはじめ、上顎のあたりや歯肉、唇、頬粘膜など、あらゆる上皮部にできます。

線維腫と同様に、歯などで噛んだりこすれたりして慢性的な刺激が与えられて発生することが多く、基本的には腫れ以外は無症状です。

悪性の腫瘍もある?

上記でご紹介したものは良性腫瘍であり、ほとんどの場合悪化することはありません。
一方で、非歯原性腫瘍の中には悪性腫瘍も存在するのです。

悪性腫瘍は、癌腫と肉腫に分けられます。
癌腫とは、舌や歯肉、唇など、お口の様々な場所にできる上皮性腫瘍です。

肉腫は非上皮性腫瘍であり、骨肉腫、悪性黒色腫、悪性リンパ腫といった種類があります。
悪性黒色腫は、進行すると患部が黒く着色されます。また、悪性リンパ腫とは、リンパ系の組織から発生するがんのことです。

癌腫と肉腫は、上皮性か非上皮性かという違いだけでなく、癌腫のほうが肉腫よりも発生率が高かったり、高年齢の患者さんほど発症しやすくなったりという特徴があります。
一方で、肉腫が発症することは稀ながら、肉腫は癌腫よりも悪性度は高いのです。
悪性腫瘍は、良性腫瘍と比べて進行が速いことが特徴。また、悪性腫瘍は再発したり、転移したりすることも少なくありません。

腫瘍治療で顎骨や歯を失ったら…

悪性腫瘍の状態によっては、腫瘍を完全に取り除くために、顎骨や歯まで含めて切除することがあります。
悪い部分が体に残っていると、完治に至らず、再発や転移の可能性も高くなるためです。

切除によって顎骨や歯を失った場合には、人工の顎骨・歯で補う治療が行われ、歯の部分はインプラント治療が用いられることが多くあります。
インプラント治療は自費診療であり高額というイメージが強いですが、悪性腫瘍の除去のために顎骨や歯を失った患者さんは、国が定めた条件を満たせば、公的医療保険適用となります。

ただし、公的医療保険を適用してインプラント治療ができる施設は限られていますので、確認してから受診してくださいね。
非歯原性良性腫瘍の治療後に公的医療保険を適用してインプラント治療を受けられる条件については、 インプラント治療が保険適用になる条件とは?を参考にしてみてくださいね。

まとめ

お口の中にできる腫瘍には、歯原性腫瘍と非歯原性腫瘍があり、非歯原性腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれているのです。
腫瘍ができたからといって悪性腫瘍とは限りません。しかしながら、お口の中の腫瘍のほとんどは切除する必要があります。

腫瘍が大きくなればなるほど、切除した後のお口の中の環境が変わるかもしれません。
咀嚼や会話など、日常生活にも支障が出る可能性もあります。お口の中に違和感があれば、早期に耳鼻咽喉科や口腔外科を受診するようにしましょう。

既に疑いがあると診断されている場合は、早急に精密検査を受けて治療を相談されてくださいね。