顎関節強直症とは?

両耳の前方部にあり、口を開けたり閉じたりするときに動く関節です。頭の骨に下顎の骨がはまるような構造になっていて、食べたり話したりするために重要な役割を果たしています。

顎関節内部の骨が何らかの原因でくっついたり、顎関節周りの靭帯に石灰化が起こったりして、顎の関節が動かなくなる状態が顎関節強直症です。症状としては、口を開けようとしても指1本分ほどしか開かないなど、開口障害が見られます。

顎の強打などの外傷によって引き起こされるケースや関節リウマチ、感染などが原因で起こることもあります。子どもの場合、転倒して顎をぶつけて顎関節強直症になることが多いです。関節リウマチが原因となることや、先天性で生まれつき顎関節に障害があるケースもあります。

顎関節強直症は治療で治せるの?

まずCTやMRIなどで顎関節強直症かどうかを画像診断します。

成人で骨がくっついていたり、石灰化が起こっていたりする場合には、顎関節授動術(がくかんせつじゅどうじゅつ)という顎の運動性を回復するための手術を行うことが一般的です。これは、関節のくっついている部分を切除するなどで開放し動くようにしたうえで、関節結節や下顎頭の骨の形成を行う手術となります。

開口障害が長い場合には周りの筋肉が硬くなっていることもあるため、筋肉の一部を切除することも。術後、口を開くための訓練を数ヶ月から数年続けることで、症状の改善を目指します。

また、子どもが顎関節強直症を発症している場合、開口障害だけでなく、下顎骨の発達に支障が出る可能性があるため注意が必要です。主に下顎の成長に左右差が出て正面から見た顔貌が左右非対称になることがあるほか、両側に顎関節強直症を発症した場合には、小下顎症といった顎のゆがみが起こることもあります(上顎が下顎より前に出るので、出っ歯になることが多いです)。

子どもの場合には手術を行わずに、口を開くための訓練を行っていくことが基本です。口が開くかどうかだけでなく、噛み合わせにも問題がないかといったことに注意しながら治療を進めていきます。

顎関節強直症とリウマチの関係

顎関節強直症は、顎の外傷以外に、関節リウマチによって引き起こされることもあるのです。

関節リウマチとは、全身の様々な関節に炎症が起こり、腫れたり痛んだりする疾患のこと。次第に関節の軟骨や骨が破壊されて強直していき、関節の変形が起こってしまいます。明確な原因は不明ですが、リウマチになると体を守る免疫が異常を起こし、自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患であると考えられているのです。

関節リウマチは膝関節以外に顎関節に生じることもあり、結果的に顎関節強直症となるケースがみられます。初期段階では口を開くときに痛みを伴い、その後下顎頭が変形して口が開きにくくなるのです。

関節リウマチは、早期の発見・治療によって関節破壊の進行を防ぐことも可能なため、関節リウマチ専門医の診断を受けるようにしましょう。

まとめ

開口に問題なければ、指3本分(40mm以上)はお口が開きます。顎関節強直症になると、指が1−2本分しか開かないこともあります、10歳未満の子どもにも発症することがあり、下顎の発達を阻害してしまうため、「子どもの口が開かない。この前転んだせい?」など不安を感じた場合には、早期の診断・治療をおすすめします。

顎関節強直症の治療は、顎関節受動術により問題のある骨や筋肉を切除し、処置後は開口訓練を数ヶ月行っていきます。口が大きく開けられるようになるには半年から1年など長い訓練の期間を要する可能性もあるので、忍耐が必要です。

この記事でお口に対するあなたの不安が少しでも解消されたら幸いです。

本記事の内容は患者さんのお口の中の状況により異なる可能性がありますので、詳しくは治療を受ける歯科医院にお問い合わせください。