お口の健康で患者さんの人生の価値を高めるために
編集部:医院のコンセプトをお聞かせください。
三串先生:まず患者さんに、「お口の健康があることによってあなた自身の健康、あなた自身の人生が輝いて人生の価値が創造できますよ」ということをしっかり伝えていきたいと思っています。
詰め物が取れたから治すとかそういうことだけではなく、患者さん自身の人生において、お食事したりとか、お話したりとか、笑ったりとか、患者さんの人生の価値が高まるように歯科医院を使ってもらいたいと思います。
私たちも歯科医療を通じて患者さんに貢献し、患者さん自身に良くなっていただくことでお礼の言葉をいただいたり、生活の糧をいただいたりすることで、自分たちの人生の価値も創造していこうと、そういう理念のもとでこの医院を運営しています。
予防とは「変わらない価値」を守ること
編集部:私が以前歯科衛生士として働いていた時は公的医療保険が効かない予防歯科の場合は患者さんが来なくなってしまうケースが多かったのですが、予防歯科に積極的な患者さんは多くいらっしゃいますか?
三串先生:なかなか難しいですよね。
歯科医師は治療で何か変えるじゃないですか。見た目が変わるので伝わりやすいですよね。
歯がなくなったり痛いときには熱心に来て、これはまずいんだなってことで行動変容っていうのでしょうか。
患者さんも来てくれるんですけど、やっぱり2回3回って続いてくるとなんかめんどくさいなとなってしまう、そういうことはあると思うんですよ。
ただやっぱり、いつも使ってるものがなくなってから初めて気が付くんじゃなくて、普段からお口の健康っていうのはすごい大切なんだっていうのを知ってもらうために、患者さんへの声掛けや情報発信を行っています。
お口の感染症の場合、特に虫歯はもう元に戻らない、歯を削ったら元に戻りませんので、そういったところに少し心を砕いていただけるように常々語りかけるようにしています。
感染症である虫歯とか歯周病っていうのは、しっかりしたブラッシングをしたりフロスをしたりとか、そういうことによってある程度はリスクを減らすことはできます。
私や歯科衛生士としましては、どのようにしたら患者さんに歯ブラシを持ってもらえるか、染め出し(磨き残しに色を付けて視覚的に見やすくする方法)をしてもらえるかとかですね。
あとはご自身でのケアだけでは足りないところは歯科医院を利用していただいたり。
歯の健康を守ることは変わらない価値だと伝えることを重要課題として、常々みんなでミーティングを行い取り組んでいます。
デンタルツアーでお口と向き合う
三串先生:お口の予防や治療は、歯科医師や歯科衛生士がいくらいろいろやっても患者さん自身がやりたいと思わなければあまりうまくいかないんです。
そこで、当院では「デンタルツアー」と呼ぶ時間を設けています。
患者さんにまずは歯科医院に来てもらって、その次に患者さんに自分自身を知ってもらう。
そのために当院では検査に力を入れています。
患者さんがお口の中と向き合う時間を作ることで、「こんなに汚れているのは気が付かなかった」とか「この黒いのなんですか」「血がすぐ出てきて怖い」など、気づきのきっかけになるんです。
私がこうしなさい、ああしなさいって言うのではなく、患者さんが治したいと思えるように、手助けできるような仕組みを考えて行っています。
患者さんの人生にアプローチする歯科医師へ
編集部:全身の健康に寄与する、患者さんの人生にアプローチする歯科医師になりたいとお考えになったきっかけをお教えください。
三串先生:大きなきっかけはですね、研修時代の1年目に短い期間でしたが医学部の病院に行ったことです。
例えば病棟から紹介された癌の患者さんが入れ歯を直してほしいというんですが、入れ歯の調整や治療と言うのは時間がかかります。
そうすると、身体にたくさん管(くだ)がついている人はなかなかうまくいかないんです。
それに、私はその頃新人ですから、担当の患者さんがいない。
それで歯科に来た患者さんが病棟に戻るのをお見送りする時とかに、患者さんが看護師さんに「ちゃんとやっとけばよかったなぁ」と言うんです。
歯科の外科手術をした患者さんの経過を見たり、糖尿病のコントロールがされているかどうかを見るために入院患者の病棟に行くこともありました。
そうすると、「若い先生が来た」みたいな感じで、おばあちゃんがよく声をかけて聞いてくれたりするんですけど、大体みんな「食べられないのよ」と話すんです。
お見舞いにも食べ物が多いですし、食べられない方も食事に関する話をする方が非常に多いように感じました。
美味しいものを食べることが身近な楽しみの中でも優先順位が高いんですよね。
ここでの経験で私は、自分が選んだ歯科医師と言う仕事が人々にとってかけがえのないものだという確信を持つことができ、貢献していきたい、患者さんの人生にアプローチする治療を行っていきたいという気持ちにスイッチが入ったのだと思います。
口福な人生を送るために
編集部:患者さんへのメッセージをお願いします。
三串先生:歯周病は慢性疾患です。
歯周病の人がブラッシングをして血が出るということは、皮が破れてるということです。
そこから細菌が入り込んで全身に巡ることによって、心臓が悪くなったり糖尿病の症状がより強くなったり、全身疾患に影響してくるということが言われています。
また、歯周病になると認知症になりやすかったり、歯がないと血流が下がって認知症になりやすいという話もあります。
お口から全身の健康に関与する話を知ってもらいたいですね。
そして、ブラッシングをしたり、歯科医院を利用して細菌を除去することでお口の中の環境を整えて、おいしくお食事をいただいたり、お友達やご家族とおしゃべりを楽しんでいただきたいと思います。
そのために私をはじめ、当院のスタッフがお役に立てるのならこんなに嬉しいことはありません。
【ドクター情報】
ファミーユ歯科・矯正歯科 院長
三串 雄俊
・歯科医師
・特定非営利活動法人 日本歯周病学会 専門医
・公益社団法人 日本口腔インプラント学会 専門医
・日本矯正歯科学会会員 インビザライン公認ドクター