家庭用超音波スケーラーで歯石は除去できる?

超音波スケーラーとは、超音波で歯石を粉砕することで、歯にくっついている歯石を効率よく取り除くための機械です。

歯科医院で使用されている医療用の超音波スケーラーはピエゾ式と呼ばれ、リニアストロークという線方向に振動し、歯石を超音波振動により破壊するタイプです。
エプティカルストロークという楕円運動によって歯石を除去するマグネット式の超音波スケーラーに比べると歯を傷つけてしまう可能性が低減されています。

家庭用超音波スケーラーですが、医療用では使用頻度の少ないマグネット式超音波スケーラーが多いといわれています。
現在は日本でも世界的にも、超音波スケーラーはピエゾ式が主流であり、マグネット式を使用している歯科医院は少ないと言われています。

超音波スケーラーは正しい使い方ができれば歯石除去の強い味方ですが、使い方を間違えてしまうとお口の中に大きなトラブルを招く可能性も。

手軽にできるなら使おうかな…と思っている方は、家庭用超音波スケーラーの危険性について一緒に確認していきましょう。

家庭用超音波スケーラーは危険!?

歯を傷付けてしまう

家庭用超音波スケーラーで多いと考えられるマグネット方式は、間違った角度で使うと秒速3万回のスピードで歯に強く触れてしまうのです。

歯石取りはプロである歯科衛生士でも長い時間の練習が必要な難しいものであり、一般の方が強いパワーを持った超音波スケーラーを使うのは危険です。

また、超音波スケーラーは細かな振動で動き、歯との摩擦で熱を発生させます。
歯科医院のように水を注入しながら使用しなければ、歯に過大なダメージを与えてしまうことがあるんです。

「注水不要」と書いてある家庭用もありますが、基本的にお口の中が乾いた状態で使用できる超音波スケーラーはありません。

知覚過敏になる

超音波スケーラーは、エナメル質や歯の根(セメント質)を傷付けてしまう可能性のある強いパワーをもっています。

そのため、使い方を間違えてしまうと、知覚過敏になる恐れも十分にあるのです。
自分自身で超音波スケーラーを使って知覚過敏になってしまった場合、何の保証も受けることができません。

歯茎を傷付けてしまう

お口の中は暗く、見えづらい部分が多いですよね。

見えづらい中、上手に超音波スケーラーを操作するのは難しいものです。
先端が鋭利であるため、歯茎に超音波スケーラーが当たってしまうと、出血したり口内炎になってしまう原因に。

一般的に、マグネット式の超音波スケーラーは歯科医院で使用する場合も、操作には非常に気をつけて処置が行われています。

歯石の取り残し

同様に、見えづらい部分の歯石をしっかり取り除くのは難しいですよね。

気付かず取り残したプラーク(バイオフィルム)や歯石が原因で虫歯・歯周病になってしまう可能性があります。

歯石が付きやすくなる

歯石を取り除くときに歯に超音波スケーラーが当たると、歯の表面のエナメル質に目には見えないほどの細かい傷がついてしまいます。

細かい傷は、再び歯石が付く原因に。
また、取り残した歯石がある場合、歯石の表面はざらついているのでプラークが付着しやすく、再び歯石が付きやすくなりますよ。

超音波スケーラーの禁忌

歯石を取るのに便利な超音波スケーラーですが、実は超音波スケーラーは使ってはいけない人もいるんです。
知らずに使ってしまうと、思わぬ大きなトラブルや全身の健康を脅かすことも。

例えば、ペースメーカーを装着している人は絶対に超音波スケーラーを使用してはいけません。
また、インプラントには専用のチップを使用する必要がありますし、被せ物には超音波スケーラーは当てられません。

歯科治療には、歯科医師や歯科衛生士であれば知っている、一般の方は知らない危険性がたくさんあるのです。

自分でやらなければ平気?

自分自身で使わずに、誰かにやってもらう、もしくは子供にやってあげるのであればお口の中がきちんと見えるし問題ない、と思うかもしれません。

たしかに人のお口であれば見えやすくはなります。
ですが、無資格の人が医療行為を行う、ということに変わりはありません。

正しい知識と技術を持たずに行えば、思わぬトラブルや不利益を被ることがあります。
大丈夫だろう、と歯石除去を行ってトラブルを起こしてしまうことは避けたいですね。

プロの歯石除去

歯科医院で行う歯石取りは、国家資格を持った歯科医師や歯科衛生士が行います。
お口のケアに特化している歯科衛生士が行う歯科医院が多いでしょう。

歯科衛生士は国家資格を取る前に、歯科衛生士専門学校で歯石除去の練習が義務付けられています。
長い時間をかけて、スケーラー(歯石除去のための器具)を思い通りに動かせるようにトレーニングするのです。

また、歯茎の下に隠れている歯の形や歯や歯茎を傷つけないスケーラーの角度や操作方法など、安全に歯石除去を行うための勉強をしています。

そのほかにも、歯石除去によって付いた歯の表面の傷を滑らかにする処置の方法や、超音波スケーラーを使用できないケース、使用しないほうが良い歯の状態などさまざまな知識のもと、患者さん1人1人のお口に合わせた安全な歯石除去を行っているのです。

自分でできる!家庭用超音波スケーラーを使わない歯石のセルフケア方法

どうしても歯石をセルフケアをしたい!という場合、おすすめしたいのは「歯石がつかないよう予防すること」です。

歯石がつかないようにケアしていれば、歯石除去をする必要はありません。
虫歯や歯周病の定期検診は必要ですが、歯石除去のための通院を減らすこともできますよ。

おうちで簡単にできる歯石のセルフケア方法をご紹介します!

毎日の歯磨きの徹底

歯石がつかないようにするには、やはり歯磨きの徹底が大切です。
歯石は、プラーク(細菌や細菌の代謝物)が石灰化した塊のことをいいます。

歯石になると歯石除去の処置が必要になりますが、プラークのうちは歯ブラシで簡単に取り除くことができるのです。

歯磨きで100%プラークを取り除くことは難しいですが、しっかりとした歯磨きを徹底することで歯石の付着量をぐっと減らすことができるはずですよ。

フロス・歯間ブラシの使用

歯磨きの徹底のほかに、歯ブラシでは届かない歯と歯の間や、歯と歯茎の隙間についた汚れも取り除くようにしましょう。

細かい隙間は歯石がつきやすい部分です。
フロスや歯間ブラシを使って隅々まできれいにすることで、歯石の付着を予防することができますよ。

歯磨き指導を受ける

磨き残しを減らすために、歯科医院で歯磨き指導を受けて毎日の歯磨きの効率をアップさせることも効果的ですね。

自分自身での歯磨きは、磨き残しが20%未満であればよく磨けている、と言われます。
100%すべてのプラークを取り除くのはなかなか難しいものです。

歯磨き指導では、患者さんのお口に適した歯磨きや歯間ブラシを選んでもらえたり、磨き残しやすい部分の磨き方の指導などを受けることができますよ。

定期的な歯科通院のメリット

定期検診で虫歯があると言われたことはない、歯石もほとんどついていないと言われるから、定期検診には面倒だし行きたくないと思うかもしれません。

しかし、異常がなくても定期検診は欠かさないほうが良いのです。
お口の病気は虫歯や歯周病、歯石の付着だけではありません。

お口の癌や全身の体調不良が舌の色に現れることもあるのです。
定期的な検診を受けていないと、お口の中の異変に気付けない可能性も。

また、たくさんの歯石がついてから除去するのは大変です。
定期健診でさっと取り除ける量の時点で定期的に取り除いておくことがおすすめですよ。

歯石の除去はプロがおすすめ

これまでにご紹介したように、家庭用超音波スケーラーの使用はリスクが高く、思わぬトラブルに繋がる可能性も十分にあります。

セルフケアに力をいれることは非常に大切ですが、歯石除去のための定期的な歯科通院は歯石除去以外のメリットもあるのです。

お口の健康を保つためにも、定期的に歯科で歯石除去を行うことをおすすめいたします。