歯肉癌は口腔がんの1つ
がんというと胃がんや子宮頸がんなど内臓などにできるがんをイメージする方が多いのではないでしょうか。
実はがんは、全体の1〜3%ではありますがお口の中にできることが。
お口の中にできるがんを「口腔がん」といい、日本では口腔がんにかかる患者さんが増加傾向にあるんです。
毎年約21,000人以上がお口の中にがんを発症し、7,000人以上が亡くなっているというデータも報告されています。
お口の中にできるがんは部位によって舌がん・歯肉癌・口唇がん・頬粘膜がん・口腔底がん・口蓋がんと呼び分けられています。
歯肉癌とは、お口の中の歯茎にできるがんであり、口腔がんの中では舌がんに次いで2番目に多いがんなんです。
下顎歯肉癌
歯肉癌は上顎よりも下顎に多く、特に奥歯の近くにできやすいことが特徴です。
下顎の歯茎にできた歯肉癌を「下顎歯肉癌」といい、口腔がんのうち15%程度を占めます。
歯肉癌は歯茎だけが侵されるのではなく、歯茎のすぐ下にある顎の骨にも進行するのです。
歯肉癌の症状
初期症状としては、歯茎が腫れて出血する、歯がぐらぐらする、といったことが多くみられます。
そのほか、進行すると歯が抜けたり、歯茎や唇にしびれがあったり、頬のあたりが腫れたりといった症状も現れるのです。
歯肉癌はお口の中の異変が目で見えるため、早期発見がしやすいがんと言われています。
しかし、虫歯や歯肉炎などの症状だと思い込んでいたり、奥歯の方の見つけにくい部分で進行している場合は受診が遅れるケースも少なくありません。
気が付くのが遅れてしまう原因には、歯肉癌を含めた口腔がんの認知度が低いことも関係しているのかもしれませんね。
もしも虫歯や歯肉炎、歯周病による症状だったとしても、早期発見・早期治療の重要性に変わりはありません。
痛みはないけれど腫れや出血がある、歯がぐらつくなど何かいつもと違うと感じたら早めの受診を心掛けてみてくださいね。
歯肉癌の治療方法とは?
治療方法は患者さんの状態などによって異なりますが、一般的には外科的療法が中心です。
歯肉癌は歯肉から骨に拡がっていく可能性があり、進行の度合いによっては歯に加えて顎の骨も含めて切除する必要があり、その部位の歯も同時に失うことになります。
顎の骨を切除する範囲は患者さんによって異なりますが、輪郭が変わる、咀嚼や嚥下などの機能が低下するといった影響が出てしまうことも。
こうした外科的療法のほか、放射線治療や抗がん剤の投与を行うこともあります。
歯肉癌で歯を失ったあとは?
歯肉癌など口腔がんによって顎の骨ごと歯を失った場合には、その後失った歯を補う治療が必要となります。
狭い範囲であれば入れ歯やブリッジで補うこともありますが、広範囲の顎の骨を失った場合はインプラント治療で補います。
通常、インプラント治療は公的医療保険が適用されず、自費治療のため高額です。
しかし、口腔がんなどにより顎の骨を大きく切除した場合は公的医療保険を適用してインプラント治療を受けることができるケースも。
公的医療保険を適用してインプラント治療を受けるときの条件に付いてはこちらのインプラント治療が保険適用になる条件とは?を参考にしてみてくださいね。
失った顎の骨の大きさのほかに、治療を受けるための医療機関も限られているのが現状です。
がん治療後に自身のインプラント治療は保険適用となるか、どの医療機関で診療してもらえばいいか、まずは担当医に相談してみてくださいね。
まとめ
歯肉癌を発症すると、顎の骨や歯を失い、咀嚼や発声、外見など、機能や見た目に影響する可能性があります。
治療後にこれまで通りの生活を送れるよう、早期に発見して治療を開始することが大切です。
米国では4月に「レッドアンドホワイトリボンキャンペーン」として口腔がんの早期発見のために、口腔癌検診の早期受診を推奨するキャンペーンが行われています。
近年では日本でも、口腔がん撲滅委員会などが11月にレッドアンドホワイトリボンを掲げ、口腔がん検診の早期受診を促す取り組みが行われ始めました。
この記事を機会に、4月または11月に口腔がん検診を受けてみてはいかがでしょうか。