マスクの素材によって感染予防効果は異なる

新型コロナウイルスの感染は飛沫が原因であると考えられるため、相手に飛沫を飛ばしてしまわないよう、そして少しでも吸い込んでしまう量を減らすために、マスクの着用が新しい生活様式の一つとなりましたね。

馴染みのあるマスクですが、感染予防の効果が大きく違うのは知っていますか?

マスクは、素材によって飛沫の吐き出し量や吸い込み量が異なるのです。
知らずにただお気に入りのマスクを使っているだけでは、自分の感染予防効果も相手にうつさない効果も弱くなってしまっているかも…。

せっかく使用しているのに、感染予防効果が弱くなってしまってはもったいないですよね。
では、素材ごとの感染予防効果について詳しくご紹介していきましょう。

不織布(ふしょくふ)マスク

不織布とは、繊維などを織ったりせずに、繊維を接着または複雑にからみ合わせてシート状にした布のことをいいます。

不織布マスクは、フィルターを中に挟んだ三層構造が一般的です。
もともと医療現場用に開発されたもので、花粉対策や黄砂対策などに高い効果が注目されており、家庭用にも不織布マスクが普及しました。

国立大学法人豊橋技術科学大学の発表によると、マスクを着けていない時に吸い込んでしまうウイルスの量を100%とした場合、不織布マスクを着けているときは
吐き出し飛沫量:20%
吸い込み飛沫量:30%
に抑制され、吐き出し・吸い込みともにマスク着用の効果があるという研究結果があります。

参考:国立大学法人豊橋技術科学大学

実はこれは医療用マスク(N95)以外の一般家庭で使用されているマスクの中では最も高い抑制効果だとされているんです。

N95マスク

不織布を素材とするマスクのうち、アメリカ合衆国の労働安全衛生研究所(NIOSH)規格をクリアした、微粒子を捕集できるマスクのことを「N95マスク」といいます。
感染予防のために、主に医療従事者が着用しているものです。

東京大学医科学研究所のウイルスを使った実験では、N95マスクを顔の形に合わせて密着させて着けることで、ウイルスの吐き出し量はマスクを着けていない場合に比べてほぼ0%にまで抑えられ、また、密着したN95マスクを着けたときのウイルスの吸い込み量は10〜20%程度に抑えられるという結果に。

布マスク

不織布マスクで行われた実験は、ガーゼの布マスクやウレタンマスクなど市販のマスクでも行っているので、そちらの結果も見ていきましょう。

布マスクを着けている時は飛沫量を
吐き出し飛沫量:18〜34%
吸い込み飛沫量:55〜65%
まで抑制できるとの研究結果が報告されているようです。

不織布マスクと比べると、吐き出し時は同じような効果がありますが、吸い込み時の効果については布マスクの方が低くなるといえます。

布マスクのほうが通気性がいいと言われる分、吸い込んでしまう量も多くなってしまうようですね。

参考:国立大学法人豊橋技術科学大学

ウレタンマスク

ウレタンマスクは洗って繰り返し使えるなどのメリットから、マスクが手に入りにくい時に急激に普及しました。

さまざまな色があり、おしゃれの一環として使用している人もいるようですね。
通気性が高く、ウレタンマスクであれば肌荒れが軽減されるという声も出ているようです。

ウレタンマスクをしている時の飛沫量は
吐き出し飛沫量:50%
吸い込み飛沫量:60〜70%
に抑制できるという研究結果が出ているようです。

吸い込み時には布マスクに近い効果が見込めるようですが、吐き出し時には布マスクよりも劣る結果となりました。

こちらも不織布マスクと比べるとかなり低い数値であり、予防効果が低いと言えるのではないでしょうか。

参考:国立大学法人豊橋技術科学大学

フェイスシールド

顔全体を透明なシートで覆うフェイスシールド。
感染物質やウイルスが顔に付着してしまうことを防ぐために使用されていますね。

フェイスシールドをしている時の飛沫量は
吐き出し飛沫量:80%
となり、マスク未着用時に近い状態という結果が出ています。

口からフェイスシールドまでの距離はあるため隙間から漏れ出し、飛沫は広がってしまうようです。

また、吸い込み飛沫量については、「小さな飛沫に対しては効果なし(エアロゾルは防げない)」とされています。

会話時の飛沫やくしゃみ、咳の飛沫はフェイスシールドでは防ぐことが難しく、ウイルス感染の予防にはならないと言えるかもしれませんね。

参考:国立大学法人豊橋技術科学大学

マウスシールド

口周辺を透明なシートで覆うマウスシールドの場合は、
吐き出し飛沫量:90%
という結果が出ており、飛沫の飛散はほとんど防止できません。

吸い込み飛沫量はフェイスシールドと同様で、小さな飛沫を予防するのは難しいという結果が出ています。

参考:国立大学法人豊橋技術科学大学

※各研究はあくまでマスクを正確に装着した場合の結果であり、鼻が出ている、サイズが合っていないなどはこの限りではありません。

効果の薄いマスクは無意味?

上記で紹介した実験結果では、不織布マスクが吐き出し・吸い込みともに飛沫予防に高い効果があるという結果が出ていますが、だからといって予防には必ずしも常に不織布マスクを着用しなければいけないというわけではありません。

肌が弱く不織布マスクで肌荒れをしてしまう、呼吸器疾患があり息がしづらいなど事情がある場合は、無理に合わないマスクをする必要はないといえるでしょう。
その分相手との距離をとる、会話を減らすなどの工夫ができるとよいかもしれませんね。

また、同じ不織布マスクでも品質があまり良くないものであれば上記のような高い効果は期待できません。

各種類のマスクを使用する例をご紹介します。

不織布マスク
・満員電車
・職場
・学校
・人混みの中
・対面で会話することが多い日
・会議や発表など大きな声を出す日
・買い物で店員さんとよく会話をする日

布・ウレタンマスク
・スーパーなど会話をせずに買い物をする日
・通行人の少ない道の散歩
・家族や同居人など、一緒にいる時間が長い人同士での接触時
・1人での運動

こちらは一例ですが、参考にしてみてくださいね。

いくら高い効果のマスクをしていても、顔にフィットしていない、マスクを外してしまうことがある、マスクを触った手で周囲を触ってしまうなどの場合は効果が薄れてしまうという結果も報告されています。

マスク自体の効果に注目することも大切ですが、使い方にも注意しておきましょう。

繰り返し使えるマスクは毎回洗う

布マスクやウレタンマスクの大きなメリットは、洗えば繰り返し使えるという点です。

ただし、洗わずに繰り返し使用したり、洗いが不十分だったりするとマスクに付着した菌やウイルスを吸い込むことになってしまうため注意が必要です。
マスクの使用後は毎回洗濯しましょう。

マスクのパッケージに洗濯方法について記載があれば、それに従って洗濯します。
特に記載がない場合は、下記の基本的な洗い方を参考にしてみてください。

マスクの基本的な洗い方

衣料用の洗濯洗剤を洗面器などに張った水に溶かし、優しく押し洗いしましょう。
その後は水で十分にすすぎ、タオルなどに挟んで水気を切って、陰干しします。

家族分などマスクが複数枚ある場合は、菌の付着を防ぐために、まとめてではなく1枚ずつ水を入れ替えて手洗いを。

また、市販のマスク用洗濯ネットに入れて、洗濯機で洗うことができるマスクもあります。
洗濯機に入れる前に軽く水洗いをして、付着している菌を落としましょう。

マスクは予防効果で選んでみましょう

昨今の社会情勢の中で、マスクを着ける目的は感染予防が第一です。

マスク生活が長くなり、見た目の可愛さやおしゃれのために可愛いマスクや色付きのマスクをしたくなりますよね。

しかし、マスクは自分自身の感染予防だけでなく、相手の感染予防のためにもなっているんです。

おしゃれや可愛いことも大切ですが、感染予防のために効果に注目してマスクを選んでみませんか?