1.歯科医院では以前から感染症対策が実施されています

歯科医院では新型コロナウイルス感染症はもちろんのこと、B型肝炎やC型肝炎、HIVといった感染症の院内感染対策についても以前から取り組んできた歴史があります。こうしたウイルスは強い感染力をもっているため適切な感染対策が必要とされており、現在でも感染予防対策を継続しています。
歯科医院で感染する場合、唾液や粘膜などお口の内からの経路になると思われるかもしれませんが、実際はそれだけに限りません。
血液などを含むあらゆる体液、排泄物、皮膚、汗を除く分泌物など、あらゆるものから感染する可能性を含んでいます。
すべての患者さんに対して、誰もが感染症を持っている可能性があると考えて感染症対策を行うという考え方を「標準予防策(スタンダードプリコーション)」といい、可能な限り使い捨ての医療道具を使用する、患者さんごとに医療器具を滅菌、院内の除菌を徹底する、といった感染予防対策のベースとなります。

しかし、2010年に行われた日本環境学会誌が開業歯科医院を対象とした院内感染予防対策アンケート調査では、マスクの使用は100%に近い歯科医院で実践されているものの、空気清浄機の設置は57%、口腔外バキュームの設置は31%にとどまっています。
また、滅菌と消毒を必ず行っている人は71%、患者さんごとに手袋を交換している人は51%と、残念ながらすべての歯科医院で適正な感染症対策がされているわけではありません
これは2010年の調査ではありますが、通院する歯科医院の感染症対策をご自身調べることが身を守るために必要というのが現状です。

2.感染症対策している歯科医院を見分けるポイント

建物の新しさや清潔そうな雰囲気だけでは、感染症対策を行っているかはわかりません。また、歯科医院の院内設備は専門的なものが多く、どれが衛生管理と関連しているかわからないのではないでしょうか。

ここでは、感染症対策を実施している歯科医院かどうかを見分けるポイントをご紹介します。

・歯科医院のホームページをチェックし、感染症対策の実施について記載されている
・タービン(歯を削る機械)が滅菌パックに入っている
・様々な器具がキャビネット(棚の上)やユニット(診療室の椅子についている机の上)に置きっぱなしになっていない
・歯科医師やスタッフの白衣が汚れていない
・会話をするときに歯科医師やスタッフがマスクを付けている
・施術時にマスクやアイガードなどを着用している
・口腔外バキュームを使用している
・患者さんの前で新しいグローブを付ける
・エプロンやコップは紙製の使い捨て(ディスポーザブル)のものを使用している
・ユニットに水滴が残っていない、スピットン周りに水がこぼれたままになっていない
・医療安全対策について(歯科外来診療環境体制加算※)の掲示がされている
・スタッフの数が少なすぎない

これだけがすべてではありませんが、衛生管理にどの程度気を遣っているかを判断する参考にしてみてください。

※外来診療環境体制加算については下記でご紹介します

3.施設基準を示す「外来環」とは

患者さんに緊急事態が起きたときに対応できる設備が十分にある歯科医院は、厚生労働省地方厚生(支)局に届出ることで保険点数請求が行える制度があります。
これを「歯科外来診療環境体制加算」(外来環)といいます。
外来環を申請するために必要な設備として、自動体外式除細動器(AED)や酸素マスク、血圧計などが挙げられます。
こうした緊急事態に使用する装置だけでなく、一定の研修を修了した歯科医師の配置、別の保険医療機関との連携(掲示が必須)といった体制の確保に加え、一定の施設基準への適合、歯の切削などで飛散する微細な物質を吸引できる環境など、衛生管理も徹底できていなければなりません。
施設基準を満たすためには、使用している滅菌器の製品名や1日の使用回数、タービン(歯を削る機械)や歯科用ユニット(診療室の椅子)の数などを届け出る必要があります。
医療安全管理対策を実施しているという旨の掲示も基準として定められているので、感染対策をしている歯科医院の見極めとしてある程度有効だといえます。
ただし、外来環の届出については歯科医院の自己申告となり、実地調査などはありません。そのため、あくまで目安のひとつして考えるのがよいでしょう。

4.そのほか見分けるためのポイント

初診時などに問診表を書くことがありますが、そこに感染症の有無について質問項目があったり、問診時に感染症の有無について歯科医師に確認されるようなことがあれば、患者さんからほかの患者さん、またはスタッフへ感染するリスクを警戒していることが伺えます。
また、治療中の歯科医師の何気ない言葉に耳を傾けてみるのもポイントです。「新しい◯◯を持ってきて」と話していれば、感染症対策への意識が高いといえます。反対に「さっきの患者さんに使ったもの」という表現をしているようであれば、もしかしたら注意が必要かもしれません。
このほか、待合室などに貼られた掲示物や、化粧室、受付などの清潔感も、院内感染対策を実施できているかという参考になります。

5.歯の治療は先延ばしにしないようにしましょう

新型コロナウイルスへの感染を恐れて歯科医院への通院を悩んでいる方もいらっしゃるかと思いますが、歯の治療が必要となった、痛みがある、定期検診を受ける時期になったなどの場合は、感染症対策を行っている歯科医院を探して、歯科医院で治療などを受けるようにしてください。
院内感染を恐れ、治療を受けないままにしているとお口の健康を損なうリスクが高まってしまいます。もし普段通っている歯科医院での対策が心配な場合は、電話などで問い合わせるのもよいでしょう。