そもそもTCHとは?

上下の歯の接触には歯ぎしりや食いしばりといった癖もありますが、こうした力のかかり方が強く、自覚しやすい接触はTCHに含まれません。TCHにあたるのは、本人も気付かないほど弱い力で、継続して接触している状況になります。

TCHが起こりやすい状況としては、ゲームをしているとき、本を読んでいるとき、料理や家事をしているとき、スマートフォンをいじっているときなど、何かに集中している場面が多いと考えられています。

こうした、日常的に噛みしめる癖や歯ぎしりなど、お口周りの習慣的な癖を総称してブラキシズムといいます。

TCHが全身へ及ぼす悪影響

自覚症状がないほど弱い力で噛んでいるにもかかわらず、体に悪影響が出るものなのでしょうか?

弱い力だとしても、継続的に歯に負担がかかっていると、骨と歯根の間にある歯根膜や歯肉が圧迫されます。それが血行不良などにつながり、歯の違和感や痛み、知覚過敏といった症状が現れるようになります。

このほかに歯ぎしりや食いしばりの悪化、歯が欠ける、冷たいものがしみる、歯周病の悪化、歯列のゆがみ、肩こりや顎関節症、頭痛などが、TCHの症状として考えられています。

TCHは1日の単位で考えれば小さいものですが、それが毎日積み重なるとさまざまなトラブルに発展する恐れがあり、甘く見てはいけない悪習癖だと言えます。

TCH改善のための意識付け

無意識にやってしまうTCHは改善が可能なのでしょうか?

まず、ご自身がどういったときに上下の歯を接触させているのか自覚するところからスタートします。
家の中でよく使う台所や仕事机、トイレなどに付箋などで目印を付け、付箋に気付いたときに上下の歯が接触していないかを確認します。

もし、このとき5割以上の割合で歯が接触しているようであれば、TCHの疑いがあると考えてよいでしょう。TCHと判明した後も目印を付け続け、気付いたときに上下の歯を離して癖を直していきます。

上下の歯がくっついていると自覚したときには、息を大きく吸い込みながら肩を上げ、ゆっくり肩を脱力しながら息を吐きます。すると、全身の力が抜けて口の中も自然とリラックスして上下の歯列に隙間ができます。

TCHがなくなっていくと、それまで原因がわからず悩んでいた歯の痛みや慢性的な肩こり、顎関節症、頭痛といった症状が改善することがあります。

こうした対策を講じても症状が改善しない場合は、お口周りのトラブルの原因がほかにあるかもしれません。口腔外科に症状を伝え、相談してみてください。

TCHのチェック診断

自分では気づきにくいTCH。ここでは、TCHが疑われる症状などについてチェックリスト形式でまとめました。ひとつでも当てはまれば、TCHの可能性があります。

チェックリスト

・各所に付けた付箋などの目印を見たとき、歯と歯を接触させている割合が5割以上ある

・顎が常に疲れている感じがする

・寝起きに歯が痛い、肩や首がこっている

・頭痛や顎関節症といった症状がある

・歯の詰め物が取れやすい

・朝起きたとき、顎や顎の周囲がこわばっている

当てはまる項目がある方は、普段の生活で上下の歯を接触させないよう心掛けてみてください。癖に気付くたびに全身をリラックスさせるだけで、TCHは改善されていきます。

まとめ

TCHは自覚がないほどの弱い力による歯の接触ですが、言い換えれば日常的な癖になっているということです。TCHの時間が長くなるほど体への負担が大きくなり、歯の痛みだけでなく頭痛や顎関節症といった全身の症状にも現れるようになります。

習慣的な癖を直すためには、台所や自室のデスクなど、ご自身がよく作業する場所にメモや付箋を貼って自覚する機会を作りましょう。その度に深呼吸するなどして脱力することで、TCHが出る時間を少しずつ減らすことができます。頭痛や顎関節症、肩や首のこりといった症状が改善される可能性があります。

もし、あなたが原因不明の肩こりや首のこり、顎の違和感といった症状に悩まされていたら、もしかしたらTCHかもしれません。スマートフォンをいじっているときや料理などの家事をしているときに、少しお口の中を意識して、上下の歯が接触していないかチェックしてみてください。