スポーツ選手がガムを噛む理由

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近年、再び人気が高まっているプロ野球。以前、試合中にガムを噛んでいるのは外国人選手くらいでしたが、現在では千葉ロッテマリーンズがガムをベンチに常備するなど、試合中にガムを噛んでいるのが当たり前の光景になっています。野球以外では、サッカーやバスケットボールの試合中に選手がガムを噛んでいる姿を見かけることがありますね。

こうした姿を見たスポーツファンからは「だらしない」「子供に悪影響だ」という意見もあります。しかし、スポーツ選手がガムを噛むのには、心身を整えてベストパフォーマンスを発揮するというれっきとした理由があります。アマチュアとしてスポーツを楽しんでいる方にとっても、ガムを噛むことで思いも寄らないパフォーマンスを発揮できるようになるかもしれません。今回は、スポーツ中にガムを噛むことの効用や、スポーツしながら噛むのにおすすめのガムなどをまとめました。

1.なぜスポーツ選手はガムを噛むの?

スポーツ選手がガムを噛む理由として、主に以下のようなことが挙げられます。

・リラックスできる
・集中力の向上
・筋力を上げる

競技中は、どのスポーツでも高い集中力が要求されます。また、過度に興奮しすぎないようメンタルをコントロールすることや、瞬間的に筋力を上げることも、ベストパフォーマンスを発揮する条件といえるでしょう。こうした条件を揃えられるのが、ガムを噛むという行為です。選手たちは、ファッションでガムを噛んでいるわけではありません。ガムを噛むことによる競技能力の向上は医学的にも証明されています。

2. セロトニンの分泌でリラックスできる

ガムを噛むとき、皆さんは一定のリズムで口を動かしているのではないかと思います。この動作は「リズム運動」と呼ばれており、リズミカルに口を動かすことで「セロトニン」が脳内で分泌。気持ちが落ち着き、自然とリラックスできるようになります。うつ病など精神的な病を抱えている方は、セロトニンの分泌を促進させる薬を服用することがあります。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、これを整えることで集中力も高まると考えられています。

また、集中力の高まりにより、平常心を保てるという相乗効果も期待できます。周囲の環境や状況に左右されず、自分のパフォーマンスだけに集中することで好結果を生み出せるかもしれません。

2019年ラグビーワールドカップ日本代表の田中史朗選手は、日頃のトレーニングや試合前に集中を高める方法として、ガムを噛むようにしているといわれています。脳が活性化されて「スイッチ」が入り、徐々に集中して試合モードを作っていくそうです。世界を舞台にして活躍する一流アスリートも、ガムを噛む効果を実感しています。

3. 力の引き出しをサポート

人は重い物を持つなど力を入れるとき、自然と歯を食いしばっています。スポーツも同様で、野球でいえばバットを振る瞬間や投手がボールを投げる瞬間に、グッと歯を食いしばっています。そうしたときにガムを噛んでいると、ガムがクッションの役割を果たします。また、予備動作としてガムを噛んでおけば、スムーズに力を入れやすくなるというメリットも考えられます。

噛むために必要な顔の筋肉は、手や足の筋肉ともつながっています。ガムは1枚で500回以上も噛むことができますが、それだけ噛めば顔の筋肉を鍛えられ、手足の筋肉にも連動して筋力をアップできるのではないかと考えられます。

近年はスポーツ用のマウスピースが広く使われていますが、これも力を入れやすいというメリットが挙げられています。ガムの役割は、マウスピースと同様に食いしばったときの力の入り方をサポートすることだとも言えます。

4. 血流が活性化して集中力アップ

ガムを噛むことで集中力や判断力が向上すると言われていますが、これはどのようなメカニズムによるものなのでしょうか?

ガムを噛むと、脳内の血流が活発になります。これによって緊張している状態が緩和されて、集中力や判断力の向上につながると言われています。このメカニズムはMRI検査によって医学的に証明されています。スポーツのみならず、車の運転でドライバーがガムを噛むのも、集中力が上がるという感覚をドライバーが実感しているからなのではないでしょうか。また、職場でガムを噛むのも、仕事の能率を上げるのに適しているかもしれません。

5. スポーツで噛むならキシリトールガムがおすすめ

お菓子で有名な株式会社ロッテでは、2018年よりスポーツやアスリート向けの専用ガムを開発。一部のプレーヤーのニーズに合わせてカスタマイズしたガムを現場に導入するなど、スポーツ用のガムの開発に力を入れています。

しかし、まだこうしたガムはリクエストに応じたプロ用のガムであり、手に入りにくいのが現状です。

一般のアスリートがトレーニングや試合前、競技中などにガムを噛むとしたら、どのようなものがよいのでしょうか?選択肢のひとつとしておすすめなのが、キシリトールガムです。キシリトールガムは虫歯の原因となる酸を作らないので、長時間噛んでいても歯への悪影響がありません。また、キシリトールガムは唾液の分泌を促し、唾液の作用である再石灰化を進めます。初期の虫歯が自然に回復する力を導き、歯を健康に保ちます。

運動中に長い時間ガムを噛むことを考慮すると、歯に優しいキシリトールガムを噛むのが健康のためにもよいでしょう。虫歯を積極的に予防するためにはガムを1日14粒噛む必要があると言われています。結構大変なことです。ガムを噛むこと自体、唾液の分泌を促すことになり、虫歯予防の効果を期待できますので、14粒でなくともガムを噛む習慣を身につけることをお勧めします。

スポーツ選手においても歯は命です。かの有名なイチロー選手は1日5回歯を磨いているそうです。歯がスポーツでのパフォーマンスを上げるために大切であることを理解しているからでしょう。ガムを噛むことに加えて、歯をしっかりと磨くこともスポーツで良い結果を出すのに重要であること、それを頭の片隅に入れておいてくださいね。

歯科医師:古川 雄亮 先生
歯科医師:古川 雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事。

歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

[参照URL] https://www.nature.com/articles/s41598-019-51077-0

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