口元が勝手に動いてしまうのはなぜ?

うたた寝していたら急に体がビクッと動いた、という経験をしたことはありませんか?

筋肉のけいれんの一種で、こうした自分の意思とは無関係に体の一部が動いてしまう症状を「不随意運動」と呼びます。

まぶたがピクピクけいれんをする、手紙などを書いていると腕や手が動いてしまう(書痙)、といった症状も、不随意運動の一種といえます。

こうした思いもよらぬ体の動きは口元にも及び、例として以下のような種類があります。

ジストニア

筋肉の異常な緊張によって起こる不随意運動で、運動を行なう回路の混乱が原因と考えられています。
症状としては、食いしばって口が開かない、話すときに舌が出てしまう、といったものがあります。

ジスキネジア

自分では制御できない不随意運動です。
お口の領域での無意識な運動の「オーラルジスキネジア」の所見としては、口をすぼめる、口をもぐもぐさせる、唇をなめ回す、舌を突き出す、歯を食いしばる、などがあります。

無意識のうちにお口が動いているため、舌打ちのような音がしたり、ぺちゃぺちゃとした唾液と粘膜があたる音がしたりすることもあり、周りの人から嫌がられてしまうこともあります。

オーラルジスキネジアの特徴的な所見・症状は?

口を尖らせる
口をすぼめる
口をもぐもぐさせる
唇をなめ回す
舌を突き出す
舌を左右に動かす
歯を食いしばる
など

症状が軽い段階では、生活に支障をきたすほどのものではないと見過ごされがちですが、放置していると重症化して健康に害が及ぶ可能性もあります。

また「高齢者ではよくあること」というふうに、家族からも見落とされがちです。そのため、早期発見と早期対応が重要になります。

家族や周囲から、「不快に感じるため何度も口を動かす癖を直してほしい、と言っているのに直らない」という話を耳にする事もありますが、本人にとっては無意識のものであり、直すことができないのです。

場合によっては、指摘されるまでお口が動いていることに気付けていないケースもあります。

何度伝えてもお口が無意識に動いているようであれば、それはオーラルジスキネジアかもしれませんね。

オーラルジスキネジアは原因不明

オーラルジスキネジアははっきりした原因がわかっていませんが、処方された薬物などによって誘発されたものと、中枢神経系の病態(アルツハイマー、認知症、統合失調症、自閉症、精神薄弱など)が関係した特発性のものに分類されます。

特に多いのは薬物誘発性で、長期的に抗精神病薬などを服用している患者さんや、抗パーキンソン病薬を投与されている患者さんに見られます。

抗精神病薬などを長期的に服用することによって現れるものは「遅発性ジスキネジア」と呼ばれ、多くの方はお口周りに症状が現れます。

このほか、うつ病や不安障害などで処方されるSSRIと呼ばれるタイプの薬も、食いしばりの原因になる可能性が考えられています。

また、お口に合わない義歯(入れ歯)などがオーラルジスキネジアのリスクを高める可能性もあるので、注意が必要です。

オーラルジスキネジアの治療方法

オーラルジスキネジアに即効性のある治療方法は確立されておらず、大きな改善を得られる治療方法はほとんどありません。

オーラルジスキネジアの症状を引き起こす可能性がある薬として、抗精神病薬と抗パーキンソン病薬があります。
薬の副作用は必ず現れるわけではありませんが、症状に気付いたら、服用している薬を確認してみましょう。

もし、服用している薬に心当たりがあっても、オーラルジスキネジアが気になるという理由で、自己判断によって服用を止めないでください。
主治医や神経内科・精神科の医師に相談し、今後の対応について検討してもらいましょう。

オーラルジスキネジアにより噛むのが困難になるなど、生活に支障が出るような症状がある場合、医師に相談して食事形態を工夫するということも考えられます。
食事の摂取量を落とさないようにしながら、長期的にオーラルジスキネジアを改善させていくことが大切です。

また、部分入れ歯などの義歯の不具合が、オーラルジスキネジアを悪化させている可能性もあります。
使用している入れ歯に問題があれば、歯科医院で調整してもらうこともご検討ください。

まとめ

オーラルジスキネジアはすぐに改善できる方法はありませんが、早期発見と早期対応で重症化を防げる可能性が高まります。

お口周りが自分の意思と関係なく動いてしまう症状や服用中のお薬で気になることがあれば、医師にご相談ください。