MRI検査とは?


MRIとは磁気共鳴画像撮影法のことで、正式には「Magnetic(磁気) Resonance (共鳴)Imaging(画像)」といい、磁石と電磁波を利用して身体を断面図として撮影することができる検査です。

ヒトの身体は、多くの水分(H2O)を含んでいます。
MRI検査の際に入るトンネル状の空洞が大きな磁石の役割を果たし、その中に電波を充満させることによって、ヒトの身体の中の水素原子の位置や動きを解析します。

磁石と電磁波により空気が振動するため、MRI検査中は大きな響く音が鳴ります。

MRI検査とCT撮影の違い

MRIとCTの装置は見た目が似ているため、MRIとCTの違いについて疑問を持つ方も多いかもしれません。

MRIでは磁力と電磁波を用いた画像出力、CTではX線を用いた画像出力であり、撮影方法が大きく異なります。
MRI検査ではX線を使用せずに身体の内部を撮影するため、放射線被ばくの心配がありません。

また、MRI検査はCT検査と比べて骨の存在の影響を受けにくく、血管の異常、「脳」や「子宮」「卵巣」「前立腺」骨に覆われている組織や、「関節」や「脊椎・脊髄」など骨と骨以外のさまざまな組織で成り立っている部分を効率的に検査することができます。

しかし、空気が含まれている「肺」や出血を伴う「脳出血」「くも膜下出血」の検査ではCT検査が選択されるケースも多いようです。

MRI検査でわかること

MRI検査は、全身の幅広い部位を撮影することができます。

特に頭部や脊椎・脊髄、関節といった骨に覆われている部位や、骨と骨以外の組織が組み合わさってできている部位の検査を得意としています。

一般的に
・脳、脳血管、脳腫瘍
・脊髄、脊椎
・腹腔内臓器
 (肝臓、膵臓、胆のう)
・骨盤内臓器
 (子宮、卵巣、前立腺、膀胱、消化管)
などはMRI検査を行うケースが多いとされています。

また、MRI検査は局所(ある一定の場所にとどまっている病巣)の状態や広がりを評価したい場合や、脳の萎縮を評価したい場合などに用いられています。

脳ドックとしてMRI及びMRA(脳血管のみを撮影する)検査を受けることで、いわゆる脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)や、脳腫瘍を早期発見することもできます。

MRI検査でわかる主な疾患

【脳、頭部】
脳腫瘍、脳血管疾患、変形性疾患、脳奇形、外傷 など

【脊椎、脊髄】
頚椎症、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、脊髄奇形、脊柱管狭窄症 など

【関節】
靱帯損傷、半月板損傷、腱板断裂、前十字靭帯断裂、骨挫傷 など

【消化器系】
肝臓がん、肝障害、胆のうがん、胆管結石、膵臓癌、膵管拡張、膵萎縮 など

【婦人科】
子宮がん、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣がん、卵巣のう腫 など

【泌尿器科】
前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、腎盂・尿管病変 など

MRI検査の流れ

MRI検査が必要と診断されてから、受診するまでの流れをご紹介します。

1.MRI検査を受けられる医療機関を探す

MRI検査が必要と診断され、通院している病院ではMRI検査が受けられない場合、まずはMRI検査を受けることができる医療機関を探しましょう。

疾患の疑いがあるケースのMRI検査では通常、通院している病院からMRI検査を受けることができる医療機関を紹介してもらうことができます。
紹介してもらった場合は、紹介状を書いてもらうとよいでしょう。紹介状なしで新しく総合病院や大学病院にかかる場合、「初診時保険外併用療養費」がかかってしまうこともあります。

子宮・卵巣がん検診や脳ドックなど健康診断としてMRI検査を受けたい場合は、検査したい部位のコースのある医療機関を探しましょう。
脳ドックのみを行っている医療機関では、MRI検査の設備はあっても、子宮・卵巣がん検査を受けることはできません。

また、健康診断のMRI検査は、費用や検査にかかる時間などが病院によって異なるため、希望する条件に当てはまる医療機関を探しましょう。
予約の空き具合も確認しておきましょう。

2.MRI検査の事前準備

【前日】
特に制限はありません。医師から指示があった場合は指示に従いましょう。

【当日の飲食について】

腹部・骨盤検査の場合、検査時間より4∼6時間前から食事制限があることがほとんどです。食事可能な時間を事前に医師に確認しておきましょう。
お茶かお水であれば、水分の制限はないことが多い傾向にあります。

膀胱、子宮、卵巣など骨盤部の検査では「トイレは検査の1時間前まで」とするなどの排尿制限があるケースもあります。水分の取りすぎには注意してください。

【当日の身だしなみについて】
MRI検査は、磁力と電磁波を用いて検査を行います。

化粧品には、磁性体(金属など、磁性を帯びることが可能な物質)が含まれているものもあり、検査結果に影響を及ぼしてしまう可能性があります。

メイクはなるべくせずに医療機関へ行くことが望ましいでしょう。
どうしてもメイクをして通院したい場合は、検査の前にメイクを落とすよう指示されることもあります。

カラーコンタクトも同様に、金属が使用されているものがありますので避けるとよいでしょう。
付けていく場合は検査の際に外してもいいように、コンタクト保存容器を持参しましょう。

そのほか、金属のアクセサリーや下着のワイヤーなども身につけておくことができません。貴重品は付けていかないようにしておきましょう。

私服で検査を受けることができる医療機関もありますが、金属類が付いている服や、検査結果に影響を及ぼす可能性があると判断された場合は、医療機関が用意している検査着に着替える必要があります。

3.検査開始

検査時間は撮影部位、範囲によって異なりますが20~40分、長くても1時間程度で終了します。
そのほか着替えの時間などを含め、医療機関での滞在時間は約2時間程度とされています。

金属を所持していないかどうかの確認や、耳栓(ヘッドホン)の装着など検査の準備を行います。
検査中は身体を動かすことができないため、検査中に異変を感じた場合の連絡方法についての指示をよく聞いておきましょう。

検査中

検査用ベッドに寝て検査を受けます。リラックスして、動かないようにしましょう。

検査が始まると「ガーガー」「トントン」などの大きな音が聞こえてきます。
万が一耳栓やヘッドホンがずれていて、大きな音が気になる場合は勝手に動かず、まずは検査技師へ伝えましょう。

気分が悪くなった時や、異変を感じた場合も同様に、速やかに検査技師へ伝えてください。

検査する部位が胸部・腹部の場合は息を吸う・吐くなど、検査技師から呼吸について指示があるためよく聞くようにしましょう。

4.検査終了後

MRI検査は、結果が出るまでに数日かかります。
かかりつけの病院へデータが届くのか、自宅に届くのかなど必要事項を確認しておきましょう。

食事を含め、日常生活は制限なく送ることができます。

造影剤を使用した場合は、尿としての排泄を促進するため、水分を多めに取るよう意識してください。

MRI検査を受けられないケース

MRI検査は放射線被ばくを伴わないため安全な検査ともいわれていますが、すべての人が受けることができるわけではありません。

MRI検査を受けることができない方、事前に相談が必要な方についてご紹介します。

検査を受けられないケース

・心臓ペースメーカーを使用している方
・金属製の人工心臓弁を留置している方
・人工内耳、人工中耳を使用している方
・脳深部刺激装置、脊髄刺激装置を埋め込んでいる方
・妊娠中、妊娠の可能性がある方

事前に相談が必要なケース

・検査から8週間以内に血管ステント置換術を受けられた方
・動脈瘤手術により、金属クリップを入れている方
・刺青のある方(アートメイクを含む)
・体内に金属が留置されている方
・人工関節、人工四肢を使用されている方
・インプラント、マグネットデンチャーを使用している方
・閉所恐怖症の方
・感染症がある方
・授乳中の方

*磁力を活用した入れ歯を使用している場合、撮影前に外します。MRI撮影により磁力が弱まる可能性があります。

また、
・腎臓に疾患や障害がある方
・喘息と診断されたことがある方
・造影剤を使用する検査で、副作用が出たことがある方
も、造影剤を使用しての検査ができない可能性がありますので、事前に医師に相談が必要です。

MRI検査を活用しよう

MRI検査は、検査時間が少し長く、大きな音がするなどのデメリットはありますが、放射線を使用せず、身体への影響が少ないというメリットがあり、安心して受けることができる検査として注目されています。

注意事項をよく守り、指示に従って受けるMRI検査は怖いことはありません。
MRI検査を受けるにあたり不安なこと、心配なことなどがあれば事前に担当の医師や検査技師とよく相談してみましょう。

近年では、MRI検査は脳卒中の早期発見や腫瘍の有無を高精度で診断できることから、脳ドックとして健康診断に取り入れられていることもあります。

脳卒中は寝たきりになる、運動障害、言語障害が起こるなど、後遺症の起こりやすい疾患であり、早期発見、早期治療が理想的とされています。

長く健康に過ごすためにも、MRI検査を有効活用してみてはいかがでしょうか。