総入れ歯には保険診療と自由診療がある

自分に合った、長く使える総入れ歯を作製したい時にまず悩むのは、総入れ歯を「公的医療保険適用」で作るか「自由診療」で作るかではないでしょうか。

歯科では「悪くなった歯やお口の中を日常生活に困らない程度まで回復する」治療に対して公的医療保険を適用することができます。残念ながら、よりよく噛めるようにする、より見た目を綺麗にするといった歯科治療に対しては公的医療保険は適用されません。

そのため、保険診療と自由診療では、入れ歯の素材や見た目、費用が異なってきます。

歯科医師から説明されたけど詳しくわからなかったという方に向けて、保険診療の入れ歯と自由診療入れ歯の基本的な違いについてご説明します。

保険診療の総入れ歯

保険診療とは、公的医療保険を適用して行う治療行為のことを言います。
保険診療の総入れ歯とは「公的医療保険を適用して作る総入れ歯」のことですね。

公的医療保険を適用して作製できる総入れ歯は、歯科用レジンと呼ばれるプラスチックの床と人工歯でできています。

プラスチック製の入れ歯は、割れてしまった時の修理が簡単である、入れ歯がお口に合わなくなってしまった時の調整が簡単であるといったメリットがあります。

公的医療保険が適用されるため、費用を抑えることができるのも魅力的ですね。

しかしプラスチック製のため、強度を保つため、床に厚みを持たせる必要があり、患者さんによっては違和感が強く出ることがあるようです。 そのほか、プラスチックは熱を伝えにくい、割れてしまいやすいなどのデメリットがあります。

自由診療

自由診療の入れ歯とは「作成にかかる全ての費用を患者さんが負担して作成する」総入れ歯のことです。

保険診療の入れ歯では費用の1~3割負担で済みますが、自由診療では全額を患者さんが負担します。
そのため、使用する素材や作成方法の制限を取り払うことができ、より患者さん一人ひとりに適した総入れ歯を作成することができるのです。

自由診療の総入れ歯は金属やシリコンを使用することも可能で、入れ歯の強度が上がたり、入れ歯の厚みを薄くすることもできます。 また、金属は熱を伝えやすいため食事の温度を感じやすくなります

中でも1番のメリットは、床に金属を使用することで入れ歯を薄くできることでしょう。喉の奥の違和感や息苦しさ、大きな入れ歯が入ることによる嘔吐反射(吐き気)を軽減することができるケースがあります。

金属の種類によっては、より軽い入れ歯を作ることも。もちろん、歯茎や人工歯の見た目をこだわることや、噛み心地にこだわることも可能です。

しかし、壊れてしまった時に修理が難しいことや、合わなくなってしまった時の調整が難しいこと、費用が高額となることがデメリットといえます。

自由診療で作成する総入れ歯の費用については、ホワイトニング・審美歯科治療の値段は? 治療項目別に平均費用についてまとめました! を参考にしてみてくださいね。

自由診療の総入れ歯の種類4選

自由診療で作成する総入れ歯には、いくつかの種類があります。
主な違いは「使用する金属の種類」です。

使用する金属の特徴について確認してみましょう。

コバルトクロム合金

コバルトクロム合金は、自由診療の入れ歯の作成に古くから使用されている金属です。
チタンや金合金など、下記でご紹介する金属よりも比較的安価な傾向にあります。
比較的安価とはいえ保険診療の入れ歯に比べ、床の厚みは約1/3~1/4程度になり、強度も十分です。

チタン合金

チタンとはインプラントの人工歯根(顎の骨に埋め込む部分)や、骨折した時に身体の中に埋め込むなど、身体との親和性が高い、身体に優しい金属といわれています。
金属アレルギーの心配が少なく、腐食にも強いため入れ歯の作成に適している金属といえるでしょう。

重さはコバルトクロムの1/2~1/3程度とされており、非常に軽い総入れ歯を作成することができます。金属特有の味が少なく、違和感や不快感を軽減することが可能な素材です。

白金加金合金

「ゴールドプラチナ」や「プラチナ合金」などとも呼ばれる、プラチナと金合金を使用する総入れ歯です。

金やプラチナは、身体への有害性が少ないとされているほか、腐食しにくいため入れ歯に適している金属です。

また、金やプラチナはほかの金属と比べて柔らかいため、お口の中によりフィットする入れ歯を作成することができます。
しかし、ほかの金属と比べて少し費用が高くなる傾向にあるようですね。

シリコン

自由診療の総入れ歯では、金属やプラスチックではなくシリコンを使用した柔らかい入れ歯を作成することもできます。
「シリコーン入れ歯」や「コンフォート義歯」などとも呼ばれています。

歯茎にあたる面が柔らかいため、歯茎に入れ歯が当たる痛みを軽減することができるほか、入れ歯が合わなくなってしまった時の調整を比較的簡単に行えます。

しかし、汚れが付きやすいことやくっつきやすい食事に適していない、金属やプラスチックに比べて素材の劣化が早いなどのデメリットがあります。

お口に合った総入れ歯を作りましょう

公的医療保険適用の入れ歯と自由診療の入れ歯の違いに加えて、自由診療の入れ歯の種類について紹介しました。

残念ながら、費用の高い入れ歯を作れば使いやすい入れ歯になるというわけではありません。

総入れ歯は、患者さん一人ひとりのお口や食生活、生活習慣に合った総入れ歯を作成することが大切です。
まずは素材や費用にこだわらず、お口の中の状態やお悩みを歯科医師とよく相談してみましょう。

自由診療で高額な入れ歯を作ったのに合わなかったらどうしよう…とお考えの患者さんもいらっしゃるかもしれませんが、患者さんのことを想って治療してくれる歯科医院ならば、総入れ歯が合うまできちんと診察をしてくれるはずです。

治療を始める前に不安に思っていることを伝えておくことで、総入れ歯を装着したときに状態を詳しく聞いてくれるなど対応してくれるかもしれませんよ。

しっかり噛めるお口になるために、焦って治療を開始してしまわずに、担当の歯科医師との信頼関係を築くことができるかどうかを確認したり、不安や疑問を相談してみるといいかもしれませんね。

入れ歯についてもっと詳しく知りたい方は、総入れ歯とは? 特徴から構造・素材・治療費まで解説もぜひご覧ください。